白地に9本の青い横帯、左上に「五月の太陽」。ウルグアイの国旗は、よく見るとアメリカ国旗とアルゼンチン国旗、両方の特徴を持っています。2つの国旗のハイブリッドとして生まれた、ちょっと珍しい1枚を今回は紹介します。
まずは構成のおさらい
ウルグアイ国旗の構成は、次のとおりです。
- 横帯:上から白・青・白・青・白・青・白・青・白の9本(白5本+青4本)
- カントン:左上の白い部分に金色の五月の太陽
色は白と青の2色だけで、太陽以外に紋章もなく、情報密度はそれほど高くありません。けれども「9本」という数字の意味と、太陽の細部には、ちゃんとした物語があります。
最初は「19本のストライプ」だった
ウルグアイ国旗の歴史は、1828年から始まります。
スペイン領、ポルトガル領、ブラジル領を経て、ようやく独立を果たしたウルグアイ。1828年12月18日、初代議会で新国家の国旗が正式採択されました。デザインしたのは政治家ホアキン・スアレス(Joaquín Suárez)です。
ただ、この最初のデザインは、いまよりずっと「ごちゃごちゃ」していました。横帯の本数は19本で、白と青の交互配色でした。「19本」というのは、けっこう細かいですよね。これは当時のアメリカ国旗(13本のストライプ)を参考にして、ウルグアイの当時の地域数(およそ19)に対応させたもの、と言われています。
1830年、9本に減らされた
19本だった国旗は、わずか1年半後の1830年7月11日に、9本に減らされることになります。
理由はわりとシンプルで、「遠くから見えない」というものでした。19本もストライプがあると、特に風になびいたときに帯が細すぎて識別しにくい、という実務的な問題があったわけです。
そこで新しいデザインでは9本(白5本+青4本)となり、この9という数字は当時のウルグアイの9つの州(県/departamento)を表す、という意味に再定義されました。1830年時点での9つの州は、カネロネス、セロ・ラルゴ、コロニア、ドゥラスノ、マルドナド、モンテビデオ、パイサンドゥ、サン・ホセ、ソリアノです。
「アメリカと同じく、地域数を縞の数で表す」という発想はそのまま残しつつ、現実的な見やすさのために本数だけ調整した、というわけです。
ちなみにウルグアイは現在19の州に増えていますが、国旗の縞は9本のままです。「19→9」の縮小を経て、後の州増設では本数を変えなかった、という歴史の重みが残っています。
アメリカ国旗とアルゼンチン国旗のハイブリッド
ここがウルグアイ国旗のいちばんおもしろいポイントです。ウルグアイ国旗は、世界の国旗のなかでもめずらしい「2つの旗の遺伝子」を持つ旗なんです。
アメリカ国旗から:「ストライプで地域を表す」発想
13植民地を13本のストライプで表すアメリカ国旗のシステムを、直接借用しています。
アルゼンチン国旗から:「青と白の色+五月の太陽」
ウルグアイは独立前、アルゼンチンと一体の地域として動いていた時代があり、文化的にも歴史的にもものすごく近い関係でした。マヌエル・ベルグラーノが1812年に作った青と白のアルゼンチン国旗、そのときの青と白が、ウルグアイ国旗にもそのまま引き継がれています。
そして中央左上の五月の太陽は、アルゼンチン国旗の中央にあるシンボルとまったく同じ系譜です。1810年5月の五月革命、つまりスペインからの独立運動の起点となった出来事を象徴しています。
つまりウルグアイ国旗は、アメリカ風のストライプ構造と、アルゼンチン風の青白カラーおよび五月の太陽という、2つの国の影響が合体して生まれたハイブリッド・デザインなんです。
アルゼンチンとの「太陽の違い」
ところで、ウルグアイの五月の太陽とアルゼンチンの五月の太陽を並べてみると、微妙に違うことに気づきます。
| ウルグアイ | アルゼンチン | |
|---|---|---|
| 光線の本数 | 16本 | 32本 |
| 内訳 | 直線8本+波線8本 | 直線16本+波線16本 |
| 配置 | 旗の左上カントン | 旗の中央 |
ウルグアイのほうが光線の本数がちょうど半分です。同じ五月の太陽でも光線の数は違っていて、同じシンボルを共有しつつ、デザイン上は微妙に差別化されているというのが、両国の関係を象徴しているようでおもしろいです。
ちなみに「五月の太陽」が表すとされるインカの太陽神インティ説は、ウルグアイ側でも同じく語られますが、こちらもアルゼンチン記事で書いたように、当時の一次資料による裏付けはなく、後付け解釈とされています。
まとめ:2つの大国の影響が、9本の縞に収まっている
今回のウルグアイ国旗のまとめです。
- 白5本+青4本の計9本の横帯+左上に16本光線の「五月の太陽」
- デザイナーは政治家ホアキン・スアレス
- 1828年12月18日採択、当初は19本のストライプだった
- 1830年7月11日に視認性の問題で9本に縮小
- 9本は1830年当時の9つの州を表す(現在は19州あるが、縞は9本のまま)
- アメリカ国旗(ストライプで地域を表す方式)+アルゼンチン国旗(青白+五月の太陽)のハイブリッド
- アルゼンチンの太陽は32本光線、ウルグアイは16本(ちょうど半分)
2つの旗の遺伝子を9本の縞に圧縮したウルグアイの国旗は、南米独立期の人と国のつながりが、シンプルなデザインのなかにギュッと詰まった1枚です。