黒・黄・赤の横帯が6本、中央に白い円、そのなかに片足を上げたホオジロカンムリヅル。世界の国旗のなかでも、生き物が中央でこんなに大きく描かれている例は珍しい。それがウガンダの国旗です。今回はそんなウガンダ国旗の話。


まずは構成のおさらい

ウガンダ国旗は、上から順に次の横帯6本です。

同じ「黒・黄・赤」の組み合わせが2回繰り返されているところがちょっと珍しいポイントです。

中央には白い円があり、そのなかに灰色のホオジロカンムリヅル(Grey Crowned Crane、学名 Balearica regulorum)が描かれています。鶴は左(旗竿側)を向いて、片足を上げているポーズです。

色の意味は、以下のとおりです。

  • :アフリカの民族(native ethnic groups of Africa)
  • :アフリカの太陽
  • :アフリカ人の連帯(血を通じた絆)

「アフリカらしさ」を3色に凝縮した、汎アフリカ色の典型ともいえる旗です。


当初の提案は、全然違うデザインだった

ウガンダ国旗は、独立直前までまったく違うデザインになる予定でした。

独立準備期、ウガンダの2大政党のうち民主党(Democratic Party)が政権を握っていて、彼らが提案した国旗案は、緑・青・緑の縦三色に黄色の細い区切り線を入れ、中央に黄色いカンムリヅルのシルエットを置く、という構成でした。いまとはぜんぜん違う構成で、色は民主党のシンボルカラーです。

ところが1962年4月25日の総選挙で、ライバル政党のウガンダ人民会議(UPC)が勝利。UPCは「民主党のシンボルカラーをそのまま国旗にされるのは認められない」と、この案を撤回しました。

そして新政権のもと、UPCの党色である黒・黄・赤を使った、いまの形のデザインが急ピッチで作られることになります。独立まで残り半年もないタイミングで、国旗ががらっと作り直された、という慌ただしい経緯です。


西ドイツ国旗を参考にした

新しい国旗の設計を担ったのは、UPCの法律家グレース・イビンギラ(Grace Ibingira)。当時の司法相で、後に独立後ウガンダの主要政治家のひとりとなった人物です。

イビンギラ自身が美術の心得もあった人物で、国旗委員会の議長として当時の西ドイツ国旗(黒・赤・金の横三色)を参考にしながら、複数のデザイン案を自ら起こしました。1962年5月16日にエンテベで開かれた閣議で、この最終案が選ばれます。

ただ、ウガンダの場合は3色を2回繰り返して計6本にする、という独自のひねりを加えました。これは「もっとアフリカ大陸全体の連帯を強調したい」という思想の表れ、と解釈されています。

マケレレ大学美術学部のセシル・トッド(Cecil Todd)教授は、国旗委員会の美術顧問としてイビンギラ案にアドバイス・お墨付きを与え、合わせてウガンダの国章そのもののデザインも担当しました。ウガンダ独立期のビジュアル・アイデンティティを、イビンギラと二人三脚で担った人物です。


真ん中の鶴は「片足を上げている」理由

ウガンダ国旗の最大の見どころは、中央のカンムリヅルです。色は灰色がかった淡い色で、頭の上に金色の冠羽を持つ、本当に綺麗な鳥です。このカンムリヅルには、いくつかの意味が込められています。

「穏やかな性格」がウガンダ人を表す

カンムリヅルは穏やかで攻撃的でない鳥として知られています。これが「ウガンダ人の気質」を象徴している、というのが公式な解釈です。

「片足を上げて前進する」姿

旗の中の鶴、よく見ると片足を上げているんです。これは「ウガンダという国の前進」を表すデザイン上の選択です。「立ち止まらず、前に進もうとする国」というメッセージが、足のポーズで描かれているわけです。

イギリス統治時代の「軍のバッジ」だった

これがちょっとおもしろい歴史的背景なんですが、イギリス統治時代、ウガンダ駐留の英国軍のバッジにもカンムリヅルが使われていました。

なぜ英国がこの鳥を選んだかというと、ウガンダ国内にはブガンダ王国をはじめとする複数の伝統王国があり、それぞれに独自の旗や紋章がありました。どれか1つの王国のシンボルを使うと、他の地域から反発が出る。そこで地域に偏らない中立的なシンボルとして、ウガンダ全土に広く生息するカンムリヅルが選ばれた、という経緯です。

独立後もこの選択がそのまま引き継がれた、というかたち。植民地時代の中立性のロジックが、独立後の国の象徴にそのまま残った、という珍しい例です。


政権が何度変わっても、旗は変わらなかった

ウガンダは独立後、激動の現代史を歩んできました。

  • 1962-1971:オボテ初代政権
  • 1971-1979:イディ・アミンによる軍事独裁
  • 1979-1986:オボテ第2次政権、内戦
  • 1986-現在:ヨウェリ・ムセベニ政権

体制が何度も変わり、激しい混乱を経験してきましたが、国旗のデザインは1962年から現在まで一度も変更されていません。

このあたり、何度も旗が変わってきたアフガニスタンなどとは対照的です。政治体制が変わっても、国の旗は変わらない。ウガンダの国旗は、その安定の象徴として、激動の60年以上を見届けてきた1枚です。


まとめ:1羽の鶴が、国の物語を背負っている

今回のウガンダ国旗まとめ。

  • 黒・黄・赤の横帯6本(同じ3色の繰り返し)+中央に白い円とカンムリヅル
  • 色:黒=アフリカの民族、黄=アフリカの太陽、赤=アフリカ人の血の絆
  • 当初の案(民主党の緑青緑)は1962年4月の選挙でUPCが勝利したため撤回
  • 新デザインは司法相グレース・イビンギラ本人が中心的に起案(マケレレ大学のセシル・トッド教授が美術顧問・国章のデザインを担当)
  • 西ドイツ国旗をベースに、横帯を2回繰り返して6本に
  • 中央のカンムリヅルは「穏やかさ」(ウガンダ人の気質)+「片足を上げて前進」を表す
  • イギリス統治時代から「中立的な国のシンボル」として使われていた経緯
  • 1962年10月9日の独立から現在まで、デザインは一度も変更されていない

「国の鳥が、足を上げて前進している」。ウガンダの国旗は、動きそのものが旗のメッセージになっている、世界でも珍しい1枚です。