白と赤の横2分割、紋章には赤い鷲。ティロルの旗、アルプスの山岳地域にあるオーストリアの州の旗です。でもこの「ティロル」は国境で2つに分かれ、南側はイタリア領(南チロル)。それでも赤い鷲は、国境を越えてティロルを1つに結びます。今回はそんなティロルの旗の話です。


まずは構成のおさらい

ティロル旗の構成は、次のとおりです。

  • 背景:白(上)と赤(下)の横2分割
  • 紋章入りの旗:中央にティロルの鷲(赤い鷲)

色とシンボルの意味は、以下のとおりです。

  • 白と赤:鷲の銀(白)の盾と赤い鷲に由来します
  • 赤い鷲:ティロル伯の紋章
  • 鷲の頭の緑の冠:1567年に加えられました

白と赤、そして赤い鷲という、アルプスの地の旗です。


「赤い鷲」 ── ティロル伯の紋章

ティロル旗の、中心のシンボルを見ていきます。

銀の盾に赤い鷲

紋章に描かれたティロルの鷲は、銀(白)の盾に赤い鷲をあしらったものです。金のくちばしと爪を持ち、翼にはクローバー(シャムロック)形の飾り、頭の後ろには緑の冠があります。

13世紀から

その起源は古く、ティロル城に住んだティロル伯の世襲の紋章でした。1205年のアルベルト4世(ティロル伯)の印章には、すでにティロルの鷲が描かれています。頭の緑の冠は、1567年に加えられました。

城の名が地域の名になり、その伯爵の鷲が旗になった。中世からの由緒ある紋章です。


「国境で2つに分かれたティロル」

ティロル旗の、最も重要な背景を見ていきます。

オーストリアとイタリアに分割

歴史的な「ティロル」は、今は2つの国に分かれています。北ティロル・東ティロルはオーストリア(ティロル州)に、南ティロル(南チロル、伊:アルト・アディジェ)はイタリアに属します。第一次大戦後、南ティロルがオーストリアからイタリアに割譲されたためです。

鷲が地域を結ぶ

それでも、赤い鷲は共通のシンボルです。赤い鷲は、オーストリア側と南ティロル(イタリア側)の両方でティロルの象徴であり、国境を越えて、ティロルという地域を1つに結んでいます。

国が分かれても、赤い鷲のもとでティロルは1つ。国境を越えたアイデンティティです。南ティロルはドイツ語を話す人が多く、イタリアのなかで高度な自治を持っています(この地域の帰属には複雑な歴史的経緯があります)。


「自由の鷲」 ── アンドレアス・ホーファー

ティロルには、英雄の物語があります。

ナポレオンに抗した男

1809年、アンドレアス・ホーファーが、ナポレオンとバイエルンの支配に対してティロルの反乱を率いました。ティロルの自由を求めた、民衆の英雄です。

赤い鷲は、自由を求めて翼を広げる象徴として、ティロルの人々に愛されています。


ティロルという地域

ティロルの基本情報です。

  • 正式名:ティロル州(Tirol、オーストリア側)
  • 州都:インスブルック(Innsbruck)
  • 面積:約1.3万km²(オーストリアのティロル州)
  • 公用語:ドイツ語
  • 法的地位:オーストリアの州(歴史的ティロルは墺・伊にまたがる)

「アルプスの山岳地域」

ティロルは、オーストリア・アルプスの山岳地域にあります。州都インスブルックは冬季オリンピックを開催した街で、スキーや登山の名所として知られます。

「アイスマン・エッツィ」

南ティロルには、有名な発見があります。約5,300年前のアイスマン「エッツィ」が、ティロル一帯のアルプスの氷河で発見されました。今は南ティロル(イタリア)の博物館に収められています。


まとめ:国境を越える赤い鷲、ティロル

今回のティロル旗のまとめです。

  • 白(上)と赤(下)の横2分割+紋章入り旗は中央に赤い鷲(ティロルの鷲)
  • 白と赤は、鷲の銀(白)の盾と赤い鷲に由来
  • 赤い鷲は銀の盾に、金のくちばしと爪、翼にクローバー形の飾り、頭の後ろに緑の冠(1567年追加)
  • ティロル城に住んだティロル伯の世襲の紋章、1205年のアルベルト4世の印章にすでに描かれている
  • 歴史的ティロルは今2つの国に分割:北・東ティロルはオーストリア、南ティロル(イタリア)
  • 第一次大戦後、南ティロルがオーストリアからイタリアに割譲
  • それでも赤い鷲は両側でティロルの象徴、国境を越えて地域を1つに結ぶ
  • 南ティロルはドイツ語話者が多く、イタリアのなかで高度な自治(帰属には複雑な歴史的経緯)
  • 1809年、アンドレアス・ホーファーがナポレオンとバイエルンの支配に反乱、自由の象徴
  • アルプスの山岳地域、州都インスブルック(冬季五輪開催)
  • 約5,300年前のアイスマン「エッツィ」がティロルのアルプスで発見(今は南ティロルの博物館)
  • 面積約1.3万km²(オーストリアのティロル州)、公用語はドイツ語

国境を越えて1つに結ぶ、赤い鷲。ティロルの旗は、2つの国に分かれてもなお1つであろうとするアルプスの地の象徴です。