青地に、左上のユニオン・ジャック、右側に4羽のアホウドリの盾、両脇に2匹のロブスター、上にボート。トリスタンダクーニャの旗は、南大西洋にある、世界で最も孤立した有人の島々、イギリス海外領土の旗です。最寄りの人里まで2,000km以上。1961年、火山噴火で全島民がイギリスに避難した島でもあります。今回はそんなトリスタンダクーニャ旗の話です。


まずは構成のおさらい

トリスタンダクーニャ旗の構成は、次のとおりです。

  • 背景:青(ブルー・エンサイン)
  • 左上のカントン:ユニオン・ジャック
  • 右側(フライ側):トリスタンダクーニャ紋章

紋章の構成は、以下のとおりです。

  • :青と白で描かれた4羽のアホウドリ
  • 盾の中の青いひし形:クーニャ家の紋章に由来
  • 両脇(支え手):2匹のロブスター(トリスタンロックロブスター)
  • 盾の上:ロングボートと海軍冠
  • 標語:「Our faith is our strength(我らの信仰こそ、我らの強さ)」

アホウドリとロブスターとボートを描いた、絶海の島の旗です。


「世界で最も孤立した有人の島」

トリスタンダクーニャの、最大の特徴を見ていきます。

2,000km以上、何もない

トリスタンダクーニャは、極端に遠い島です。世界で最も孤立した、人の住む島々であり、最寄りのセントヘレナまで約2,400km、南アフリカまで約2,800kmも離れています。空港はなく、船でしか行けません(ケープタウンから約6日かかります)。

約250人、1つの集落

そこには、小さな共同体があります。人口はわずか約250人で、全島民が1つの集落「七つの海のエジンバラ」に住んでいます。島民は数種類の姓を分け合う、少数の祖先の子孫です。

地球で最も遠い場所に、固く結ばれた小さな共同体がある。唯一無二の島です。


「ロブスター」 ── 島を支える生き物

トリスタンダクーニャ旗の、支え手のシンボルを見ていきます。

トリスタンロックロブスター

両脇の2匹のロブスター(Jasus paulensis)は、島の周りに生息するトリスタンロックロブスターです。これは島の主要な産業・輸出品となっています。

国旗のロブスターが、島の経済そのもの。暮らしに直結したシンボルです。なお、盾の青いひし形は、島の名の由来となったクーニャ家の紋章から取られています。


「1961年、全島避難」 ── 火山と島民

トリスタンダクーニャの、ドラマチックな歴史を見ていきます。

1961年、噴火

1961年、島の火山クイーン・メアリーズ・ピークが噴火しました。集落のすぐそばで噴火が始まり、全島民がイギリスへ避難することになりました。

それでも、帰ってきた

そして、島民は1つの選択をします。イギリスでの暮らしを経験した後、ほとんどの島民が1963年に島へ戻ったのです。遠く不便でも、故郷の島で暮らすことを選んだのでした。

標語「我らの信仰こそ、我らの強さ」が、まさに現実になった出来事。島の精神を象徴する歴史です。


トリスタンダクーニャという領土

トリスタンダクーニャの基本情報です。

  • 正式名:トリスタンダクーニャ(Tristan da Cunha)。セントヘレナ・アセンション・トリスタンダクーニャの一部
  • 主集落:七つの海のエジンバラ(Edinburgh of the Seven Seas)
  • 面積:約207km²(主島)
  • 人口:約250人
  • 公用語:英語
  • 法的地位:イギリスの海外領土

「セントヘレナと同じ領土」

トリスタンダクーニャは、セントヘレナ・アセンション島と同じ領土に属します。セントヘレナ・アセンション・トリスタンダクーニャの一部であり、この3つでようやく1つのイギリス海外領土となります。

「トリスタン・ダ・クーニャの名」

島の名は、発見者の名前に由来します。1506年、ポルトガルの探検家トリスタン・ダ・クーニャが発見し、自分の名を島につけました(本人は上陸しなかったとも言われ、諸説あります)。

「土地は皆で共有」

トリスタンダクーニャには、独特の暮らしがあります。土地は島民が共同で保有し、外部の人は土地を買えません。強い共同体意識のもと、ジャガイモ栽培と漁業を中心に暮らしています。


まとめ:アホウドリとロブスター、絶海の島

今回のトリスタンダクーニャ旗のまとめです。

  • 青地(ブルー・エンサイン)に左上のユニオン・ジャックと右側のトリスタンダクーニャ紋章
  • 紋章は青と白の4羽のアホウドリ、青いひし形(クーニャ家の紋章)、両脇に2匹のトリスタンロックロブスター、上にロングボートと海軍冠
  • 標語「Our faith is our strength(我らの信仰こそ、我らの強さ)」
  • 2002年10月20日に紋章と旗を採択
  • 世界で最も孤立した有人の島々(セントヘレナまで約2,400km、南アフリカまで約2,800km)
  • 空港はなく船でしか行けない(ケープタウンから約6日)
  • 人口約250人、全島民が1つの集落「七つの海のエジンバラ」に住む
  • トリスタンロックロブスターが島の主要産業・輸出品
  • 1961年、火山クイーン・メアリーズ・ピークの噴火で全島民がイギリスへ避難し、1963年にほとんどが帰島
  • セントヘレナ・アセンション・トリスタンダクーニャの一部
  • 1506年、ポルトガルの探検家トリスタン・ダ・クーニャが発見・命名(本人は上陸せずとも言われ、諸説あり)
  • 土地は島民が共同保有し、外部の人は買えない
  • 面積約207km²、人口約250人

4羽のアホウドリと、2匹のロブスター。トリスタンダクーニャの旗は、地球で最も遠い島に生きる小さな共同体を、海の生き物と「信仰こそ強さ」の言葉に込めた1枚です。