赤地、左上の白い長方形に赤い十字。トンガの国旗は、南太平洋で唯一植民地化されなかった王国の旗です。1875年、ジョージ・タウファアハウ・トゥポウ1世国王が制定したもので、「憲法で永久に変更不可」と規定されている、世界でも稀な「絶対不変の国旗」です。今回はそんなトンガ国旗の話です。
まずは構成のおさらい
トンガ国旗の構成は、次のとおりです。
- 背景:赤
- 左上のカントン:白い長方形
- 白い長方形のなか:赤い十字(クーペッド十字、Couped Cross)
色とシンボルの意味は、以下のとおりです。
- 赤:イエス・キリストの血、犠牲
- 白:純粋さ
- 赤い十字:キリスト教(トンガ国民の97%がキリスト教徒)
極めてシンプルな構成で、世界で最も明確にキリスト教を象徴する国旗のひとつです。
「憲法で永久に変更不可」── 世界で唯一
トンガ国旗には、世界的に独特な特徴があります。
1875年憲法
1875年11月4日のトンガ憲法には、こう記されています。
国旗は、永久に変更してはならない。
世界でほぼ唯一、憲法で国旗の変更を禁止した国——というのが、トンガです。共産党紋章を削除したハンガリーやルーマニア、変更したのち元に戻したマラウイなど、国旗の変更がよくある世界のなかで、トンガは特異な存在です。
キリスト教の絶対化
なぜ変更不可なのかというと、国王ジョージ・タウファアハウ・トゥポウ1世の意思によるものです。トンガはキリスト教国家として永遠にあるべきで、キリストの十字を決して取り除いてはならない、という強い思いが込められています。
ジョージ・タウファアハウ・トゥポウ1世
トンガ国旗の創設者が、ジョージ・タウファアハウ・トゥポウ1世です。
1797-1893年、トンガ統一の王
ジョージ・タウファアハウ・トゥポウ1世(George Tupou I、1797-1893)は、トンガを統一した王でした。96歳まで在位し、これは世界で最長級の在位記録です。「トンガ近代化の父」とも呼ばれます。
1831年、キリスト教化
1831年、ウェスレー派メソジストの宣教師に改宗しました。トンガで最初のキリスト教徒の有力首長で、キリスト教化が国家の方向性となっていきます。
1845年、即位
そして1845年、ジョージ・トゥポウ1世として即位しました。ジョージという名は、英国王ジョージ3世に敬意を表してつけられたものです。1ヶ月で48の首長と1000の従者がキリスト教に改宗したと伝えられています。
1875年、新国旗と憲法
1875年11月4日、新憲法の発効と同時に国旗が制定されました。赤地に白いカントンと赤い十字という構成で、憲法で国旗の変更を禁止しました。
1866年版 ── イギリス赤エンサインから派生
トンガ国旗の起源をたどります。
1866年、最初のトンガ旗
1866年、ジョージ・トゥポウ1世が最初の国旗を制定しました。イギリスの赤エンサイン(British Red Ensign)に着想を得たもので、白いカントンと赤い十字を備え、「キリストの十字」を中心に据えたデザインでした。
シャーリー・ベイカー ── 首相の協力
国王と協力したのが、シャーリー・ウォルデマー・ベイカー(Shirley Waldemar Baker)です。イギリスのウェスレー派宣教師で、後にトンガの首相になりました。イギリス人がトンガの首相になり、国旗をデザインしたわけです。ニュージーランド人やイギリス人がアフリカ・太平洋諸国の国旗を作るパターンは、ソロモン諸島やトンガなどに共通する歴史です。
1875年、現代版へ
そして1875年、現代のシンプルなデザインになりました。以後、150年以上にわたって変わっておらず、世界で最も長く変更されていない国旗のひとつです。
トンガという国
トンガの基本情報です。
- 正式名:トンガ王国(Kingdom of Tonga)
- 首都:ヌクアロファ(Nukuʻalofa)
- 面積:約748km²(176の島々)
- 人口:約10万人
- 公用語:トンガ語、英語
- 宗教:キリスト教(約97%)
「南太平洋で唯一、植民地化されなかった王国」
トンガは、太平洋諸島で唯一、ヨーロッパ植民地にならなかった国です。1900-1970年はイギリスの保護領でしたが、主権は維持しました。ジェームズ・クックが「フレンドリー・アイランズ(Friendly Islands)」と命名した島々でもあります。
「絶対王制から立憲君主制へ」
トンガは、ポリネシアで唯一の君主国です。トゥポウ家が今も統治しており、現国王はトゥポウ6世(Tupou VI、2012年-)です。2010年から、絶対王制から立憲君主制に移行しました。
「ラグビーの国」
トンガで世界的に有名なスポーツがラグビーです。トンガ・ラグビー代表(Ikale Tahi、太平洋の鷲)はワールドカップ参加の常連で、フィジー・サモア・トンガはラグビーの太平洋3大国と呼ばれます。
「日本との結びつき」
トンガと日本には、意外と深い関係があります。多くのトンガ人が日本の大学や社会人ラグビーチームでプレーしており、サニックスなど日本のラグビーチームでトンガ選手が活躍しています。
ちなみに:「友愛諸島」
トンガには、ヨーロッパ人がつけた異名があります。
1773年、ジェームズ・クック
1773年、イギリスのジェームズ・クック船長が訪問しました。トンガ人の温和さに感動し、「Friendly Islands(友愛諸島)」と命名しています。
国旗の赤=友愛?
そして現代の解釈では、国旗の赤はキリストの血であると同時にトンガ人の暖かさを、白は友愛と純粋さを表すとも言われます。
まとめ:絶対不変の十字、太平洋の王国
今回のトンガ国旗のまとめです。
- 赤地+左上の白いカントン+赤い十字
- 1875年11月4日、トンガ憲法と同時に正式採択
- 憲法で「国旗は永久に変更してはならない」と規定(世界で稀な絶対不変の国旗)
- 1866年、ジョージ・トゥポウ1世が最初の国旗(イギリス赤エンサインから派生)
- 1875年、現代版のシンプルなデザインに、以後150年以上不変
- デザインはジョージ・トゥポウ1世+シャーリー・ベイカー(イギリス人宣教師・後の首相)
- 赤=キリストの血、白=純粋、赤い十字=キリスト教
- ジョージ・トゥポウ1世は1797-1893年(96歳)、世界最長級の在位
- 1831年にキリスト教改宗、1845年即位
- 太平洋諸島で唯一植民地化されなかった王国
- 1773年ジェームズ・クックが「Friendly Islands(友愛諸島)」と命名
- 現国王トゥポウ6世(2012年-)、ポリネシアで唯一の君主国
- 2010年、絶対王制から立憲君主制に移行
- 国民の97%がキリスト教徒
- ラグビーの太平洋3強(フィジー・サモア・トンガ)
150年変わらない、キリスト教の十字——トンガの国旗は、世界で最も明確にキリスト教を象徴し、最も変更されない国旗として、太平洋の唯一の王国の魂を体現する1枚です。