黒・赤・緑の横三色。中央の赤帯を挟む白い細帯。旗竿側に青い三角形と黄色い星。これが南スーダンの国旗、2011年に独立した、世界で最も若い独立国家の旗です。50年以上のスーダン内戦と、200万人以上の犠牲を経て生まれた解放の象徴であり、ナイル川源流の地、アフリカ大湖地方の心臓でもあります。今回はそんな南スーダン国旗の話です。
まずは構成のおさらい
南スーダン国旗の構成は、次のとおりです。
- 横3本の主要帯(上から):黒・赤・緑
- 白い細帯:赤帯と他の帯の間の区切り
- 左側(旗竿側):青い三角形
- 黄色い5角星:青い三角形のなか
色とシンボルの意味は、以下のとおりです。
- 黒:南スーダンの人々、アフリカ系国民
- 赤:独立闘争で流された血(50年以上の戦争の犠牲)
- 緑:豊かな農地、天然資源
- 白(細帯):平和(新生国家の願い)
- 青三角:ナイル川(南スーダンの命)
- 黄色い星:ベツレヘムの星・国民の団結
黒人国民、50年の戦争の血、緑の大地、ナイル川の青、そして団結の星。21世紀に生まれた、最も新しい国旗のシンボリズムです。
「世界で最新の独立国家」
南スーダンは、国連加盟国のなかで最も若い国家です。
2011年7月9日、独立
2011年7月9日、南スーダンがスーダンから独立しました。南スーダンの国民投票では98.83%が独立を支持し、アフリカ史上最大の住民投票結果と呼ばれました。独立にあたっては、新国旗が国連本部に掲揚されています。
国連で193番目の加盟国
2011年7月14日、南スーダンは国連に加盟しました。193番目の国連加盟国であり、これ以降、国連加盟国は増えていません(2026年現在)。まさに、世界最新の国家です。
21世紀生まれの唯一の国旗。これが、南スーダンの世界的な特徴です。
1956年〜2011年 ── 55年の独立闘争
南スーダン国旗には、血の重みがあります。
1956年、スーダン独立
1956年1月1日、スーダン(英埃領スーダン)がイギリス・エジプトから独立しました。新生スーダンには、北部のアラブ系イスラム教徒と、南部のアフリカ系キリスト教徒・伝統宗教の人々が混在しており、「北のアラブ・イスラム」と「南のアフリカ・キリスト教」という構造を抱えていました。
第一次スーダン内戦(1955-1972)
1955年8月18日、独立前から南部で反乱が起こり、第一次スーダン内戦が始まりました。17年間続いたこの戦争では約50万人が死亡し、1972年の和平協定によって南部の自治が認められました。
第二次スーダン内戦(1983-2005)
そして1983年、内戦が再燃します。ジョン・ガラン率いるスーダン人民解放軍(SPLA)が戦い、22年間にわたる戦争で約200万人が死亡しました。世界最長級の内戦です。
2005年、和平合意
2005年1月9日、包括的和平合意(CPA)が結ばれました。南部の自治と、6年後の独立投票が約束されます。
2011年、独立
そして2011年7月9日、独立が実現しました。国旗は、1983年からのSPLA(スーダン人民解放軍)の旗をほぼそのまま採用し、青の色合いだけを微調整したものです。
55年の独立闘争のシンボルが、そのまま国旗になった。これが、南スーダンです。
「ケニア国旗との類似」
南スーダン国旗は、ケニア国旗に似ています。
比較
両国の国旗を比べると、次のようになります。
| 南スーダン | ケニア | |
|---|---|---|
| 上 | 黒 | 黒 |
| 中央 | 赤+白縁 | 白縁+赤+白縁 |
| 下 | 緑 | 緑 |
| 中央のシンボル | 青三角+黄星 | マサイの盾と槍 |
色は同じでも、配置とシンボルが違う。これが、両国の関係です。
なぜ似ているか
理由は、汎アフリカ色の共通性にあります。両国とも、黒(アフリカ人)・赤(血)・緑(大地)を採用し、白い縁取りはいずれも「平和」を象徴しています。アフリカ独立旗の典型的なパターンです。
南スーダンは、アフリカで最新の独立国家であり、汎アフリカ色の最新の採用例でもある。これが、現代における意味です。
青三角と黄星 ── ナイルと団結
南スーダン国旗の、最も特徴的な要素を見ていきます。
青三角 ── ナイル川
旗竿側の青い三角形は、ナイル川を表します。ナイル川は南スーダンの命の川であり、エジプト、スーダン、南スーダン、ウガンダなどを流れる世界最長の川です。白ナイルは南スーダンを縦断しており、南スーダンの存在はナイルなしには考えられません。
黄星 ── 「ベツレヘムの星」
青三角の中央の黄色い5角星は、「国民の団結」を象徴します。また、クリスマスの「ベツレヘムの星」という解釈もあります。南スーダンはキリスト教徒が多数を占める国であり、イエス誕生の象徴でもあります。
ナイル川(青)の中の星(黄)は、アフリカの心臓部にある新国家を表す構図です。
南スーダンという国
南スーダンの基本情報です。
- 正式名:南スーダン共和国(Republic of South Sudan)
- 首都:ジュバ(Juba)
- 面積:約64.4万km²(フランスの約1.2倍)
- 人口:約1,200万人
- 公用語:英語(アラビア語・地域語多数)
- 宗教:キリスト教(約60%)、伝統宗教(約33%)、イスラム教(約6%)
「アフリカ最大の内陸国」
南スーダンは、アフリカ最大の内陸国です。海に面しておらず、国土はナイル川流域に広がり、世界最大級の湿地であるスッドなど、広大な湿地帯を抱えています。
「64の民族」
南スーダンは、極めて複雑な民族構成を持ちます。最大のディンカ族が約35%、ヌエル族が約15%を占め、ほかにもシルク族、アザンデ族、バリ族など60以上の民族が暮らしています。アフリカで最も民族多様性の高い国のひとつです。
国旗の黒はアフリカ人民を表しますが、60以上の民族の統合は困難をともなう。これが、現代南スーダンの課題です。
「世界最年少の国家、しかし内戦」
独立後の南スーダンは、新たな内戦に見舞われました。2013年、ディンカ族(サルバ・キール大統領)とヌエル族(リエック・マチャル副大統領)が対立し、約40万人が死亡、約400万人が難民・国内避難民となりました。2018年に和平合意が結ばれましたが、情勢は依然として不安定です。
独立した瞬間に、新たな内戦が始まる。これは、南スーダンの悲劇です。なお、内戦には諸説あり、評価は政治的立場により異なります。
「ヌバ山地」と「マサイ族」
南スーダンには、文化的な特徴もあります。ヌバ山地のヌバ族はレスリングで有名で、ディンカ族は平均190cm以上と、世界一身長の高い民族のひとつです。マンダリ族はアグロパストラリズム(半農半牧畜)を営み、多くの民族が伝統的な祭・衣装・儀礼を継承しています。
国旗の黄星は、60以上の民族の団結への希望を表す。これが、南スーダンの理想です。
ちなみに:「世界最大の湿地」スッド
南スーダンの地理的特徴を見ていきます。
スッド
スッド(Sudd、アラビア語で「障壁」)は、白ナイル川流域の湿地帯です。面積は約3万〜13万km²(季節により変動)と世界最大級で、古代から人や船の通行を阻む「障壁」となってきました。多様な野鳥やカバ、象の生息地でもあります。
ナイルが、湿地で阻まれる場所。19世紀の探検家や宣教師が苦しんだ地です。
まとめ:21世紀生まれの、最も若い旗
今回の南スーダン国旗のまとめです。
- 黒・赤・緑の横三色(赤帯の上下に細い白縁)+旗竿側の青三角+黄星
- 2011年7月9日、独立と同時に正式採択
- 1983年からのSPLA(スーダン人民解放軍)の旗をほぼそのまま継承
- 青の色合いだけ独立時に微調整
- 黒=アフリカ系国民、赤=独立の血、緑=農地・資源、白=平和、青三角=ナイル川、黄星=国民の団結
- 1956年スーダン独立以来、55年の独立闘争
- 第一次スーダン内戦(1955-1972):約50万人死亡
- 第二次スーダン内戦(1983-2005):約200万人死亡、世界最長級
- 2005年1月9日、包括的和平合意(CPA)
- 2011年7月9日、住民投票98.83%で独立、世界最年少の国家
- 2011年7月14日、国連193番目の加盟国
- ケニア国旗と似た色構成(汎アフリカ色)
- アフリカ最大の内陸国、面積64.4万km²
- 60以上の民族(ディンカ・ヌエル・シルク・アザンデ等)、世界最多級の民族多様性
- 2013年、独立直後にディンカ vs ヌエルの新たな内戦、約40万人死亡(諸説あり)
- スッド:世界最大級の湿地、約3万-13万km²
- 国民の約60%がキリスト教徒、首都はジュバ
55年の血と、21世紀の希望。南スーダンの国旗は、世界最年少の独立国家の理想と試練を、6色の構成に込めた1枚です。