青地に赤で縁取られた区画、中央の白いひし形に緑の火山のシルエットと金の星。シント・ユースタティウスの旗は、カリブ海に浮かぶオランダの特別自治体の旗です。通称「黄金の岩(ゴールデン・ロック)」。そして、世界で初めてアメリカ国旗に礼砲を撃った島でもあります。今回はそんなシント・ユースタティウス旗の話です。


まずは構成のおさらい

シント・ユースタティウス旗の構成は、次のとおりです。

  • 背景:青地を赤い線で4つの区画に分割
  • 中央:白いひし形
  • 白いひし形の中:緑の火山ザ・クイルのシルエットと金色の星

色とシンボルの意味は、以下のとおりです。

  • 4つの青い区画:島を囲む海
  • 赤い縁取り:ホウオウボク(フランボヤン、島を彩る木)
  • 白いひし形:純粋さと明晰さ、国歌に出てくる「ダイヤモンドの滝」
  • 緑の火山シルエット:休火山ザ・クイル、島の象徴
  • 金の星:多様な住民の団結

火山のシルエットと金の星を描いた、カリブの旗です。


「世界で初めて、アメリカ国旗に礼砲を撃った島」

シント・ユースタティウスの、世界史に残る瞬間を見ていきます。

1776年11月16日、ファースト・サルート

1776年11月16日、ファースト・サルート(最初の礼砲)が放たれました。島のオラニエ要塞が、アメリカの軍艦アンドルー・ドリア号に礼砲を撃ったのです。これは外国政府として、世界で初めて新生アメリカ合衆国の旗に公式の礼砲を撃った出来事でした。

独立まもないアメリカを、世界で最初に認めた島。だから島の記念日「スタティア・デー」は11月16日であり、旗もこの日に初掲揚されました。

「黄金の岩」 ── 世界一の貿易港

なぜそんな歴史が生まれたのか。それは当時のシント・ユースタティウスの繁栄にあります。18世紀、この島は世界で最も忙しく豊かな貿易港の1つでした。自由港としてアメリカ独立軍への武器なども取引され、「黄金の岩(ゴールデン・ロック)」と呼ばれていたのです。

その代償

そして、繁栄には代償もありました。アメリカを支援したことで標的になり、1781年にイギリスのロドニー提督に略奪されてしまいます。

小さな島が、アメリカ独立とヨーロッパの大国を巻き込む歴史の舞台になったというドラマです。


「ザ・クイル」 ── 緑のシルエットの火山

シント・ユースタティウス旗の、中心のシンボルを見ていきます。

休火山ザ・クイル

白いひし形の中のザ・クイル(The Quill)は、島を象徴する休火山です。火口の中には熱帯雨林が広がり、ハイキングやダイビングの名所となっています。

火口に森を抱く火山が旗のシンボルになった、自然の島の顔です。


2004年・2010年 ── 旗の制定と地位

シント・ユースタティウス旗の制定史を見ていきます。

2004年、地元の画家がデザイン

2004年7月29日、島議会がこの旗を採択しました。デザインしたのは、地元の画家ズウェナ・スアレス(Zuwena Suares)です。旗は2004年11月16日(スタティア・デー)に初掲揚されました。

2010年、特別自治体に

そして、島の地位が変化します。2010年10月10日、オランダ領アンティルの解体に伴い、オランダの特別自治体になりました。旗はそのまま公式の自治体の旗として継続しています。


シント・ユースタティウスという領土

シント・ユースタティウスの基本情報です。

  • 正式名:シント・ユースタティウス(Sint Eustatius、通称スタティア)
  • 首都:オラニエスタッド(Oranjestad)
  • 面積:約21km²
  • 人口:約3,200人
  • 公用語:オランダ語・英語
  • 法的地位:オランダの特別自治体(カリブ・オランダ)

「BES諸島の1つ」

シント・ユースタティウスは、BES諸島の1つです。ボネール・サバと並ぶオランダの特別自治体であり、アルバ・キュラソー・シント・マールテン(構成国)とは別の地位にあります。

「2つのオラニエスタッド」

首都の名「オラニエスタッド」には、小ネタがあります。これはアルバの首都と同じ名前で、どちらもオランダのオラニエ家にちなんでいます。


まとめ:火山と金の星、最初の礼砲の島

今回のシント・ユースタティウス旗のまとめです。

  • 青地を赤い線で4区画に分割し、中央の白いひし形に緑の火山ザ・クイルのシルエットと金の星
  • 4つの青い区画は島を囲む海、赤い縁取りはホウオウボク(フランボヤン)
  • 白いひし形は純粋さ・明晰さと国歌の「ダイヤモンドの滝」、緑の火山はザ・クイル、金の星は住民の団結
  • 1776年11月16日、オラニエ要塞がアメリカの軍艦アンドルー・ドリア号に礼砲(ファースト・サルート)
  • 外国政府として世界で初めて新生アメリカ合衆国の旗に公式の礼砲を撃った
  • 記念日スタティア・デーは11月16日で、旗もこの日に初掲揚
  • 18世紀は世界有数の貿易港「黄金の岩(ゴールデン・ロック)」で、アメリカ独立軍へ武器も取引された
  • 1781年、イギリスのロドニー提督に略奪された
  • ザ・クイルは火口に熱帯雨林を抱く休火山
  • 2004年7月29日、地元の画家ズウェナ・スアレスのデザインを採択
  • 2010年10月10日、オランダ領アンティル解体で特別自治体になった(BES諸島の1つ)
  • 首都オラニエスタッドはアルバの首都と同名(オラニエ家にちなむ)
  • 面積約21km²、人口約3,200人

火山のシルエットと、最初の礼砲。シント・ユースタティウスの旗は、アメリカ独立を世界で最初に認めた「黄金の岩」を、休火山と金の星に込めた1枚です。