公式の旗はフランス三色旗です。しかし非公式の島旗は、白地に紋章を描いたもので、上部に3つのフルール・ド・リス(青地)、中央に白いマルタ十字(赤地)、下部に3つの金の王冠(青地)を配しています。サン・バルテルミーの旗は、カリブ海のフランス海外準県の旗です。フランスからマルタ騎士団、スウェーデン、そして再びフランスへと、4つの統治者を経た複雑な歴史を1枚に込めています。今回はそんなサン・バルテルミー旗の話です。
まずは構成のおさらい
公式旗
公式旗はフランス国旗で、青・白・赤の縦三色です。
非公式の島旗
非公式の島旗は、白地にサン・バルテルミー紋章を描いたものです。その構成は、次のとおりです。
- 盾の上部:青地に3つの金のフルール・ド・リス(フランス王室)
- 盾の中央:赤地に白いマルタ十字(マルタ騎士団)
- 盾の下部:青地に3つの金の王冠(スウェーデン王国)
- 下のリボン:「OUANALAO」(先住民の島の名前)
4つの統治者の歴史を、3層の紋章に込めた、極めて歴史的な1枚です。
3つの統治者の遺産
サン・バルテルミー紋章の、最も興味深い特徴を見ていきます。
フルール・ド・リス ── フランス王国(1648-1651年、1784年以降)
フルール・ド・リス(百合の花)は、フランス王室の伝統的なシンボルです。1648年、フランスがサン・バルテルミーを初めて領有しました。
マルタ十字 ── マルタ騎士団(1651-1665年)
マルタ十字は、マルタ騎士団(聖ヨハネ騎士団)の伝統的なシンボルです。1651年から1665年まで、マルタ騎士団がサン・バルテルミーを所有していました。騎士団がカリブ海の島を統治した、世界でも稀な例です。
金の王冠 ── スウェーデン王国(1784-1878年)
金の王冠は、スウェーデン王室の象徴です。1784年から1878年まで、約94年間にわたってスウェーデン領でした。サン・バルテルミーは、スウェーデン唯一のカリブ植民地(Sweden's only Caribbean colony)だったのです。
「OUANALAO」 ── 先住民の島の名前
そして、リボンに記された「OUANALAO」は、カリブ族の先住民が呼んでいた島の名前です。先住民の遺産も忘れない、という思いが込められています。
フランス王国からマルタ騎士団、スウェーデン、そして現代フランスへ。さらに先住民の記憶まで。4つの統治者の歴史を1枚に込めた、世界でも珍しい紋章です。
スウェーデンのカリブ植民地
サン・バルテルミーの、意外な歴史を見ていきます。
1784年、スウェーデンが取得
1784年、スウェーデンがフランスから島を購入しました。その対価として、スウェーデンはゴータブリ港をフランス商人に開放しています。これがスウェーデン唯一の海外植民地となりました。
グスタフィア
スウェーデン領時代の首都がグスタフィア(Gustavia)です。スウェーデン王グスタフ3世にちなんで命名され、現代も島の首都であり続けています。スウェーデン語に由来する名を持つ島都は、カリブ海でここだけです。
1878年、フランスに返還
そして1878年、スウェーデンが島をフランスに売却しました。約94年間のスウェーデン領時代が終わります。しかしグスタフィアという名前は、今も残りました。現代のサン・バルテルミーはフランス領でありながら、スウェーデン時代の遺産が残っている。それが興味深い歴史です。
2007年 ── フランス海外準県へ
サン・バルテルミーの、21世紀の地位を見ていきます。
グアドループから分離
2007年2月22日、サン・バルテルミーがグアドループから分離しました。それ以前はグアドループ海外県の一部でしたが、2007年からフランス海外準県(Collectivité d'outre-mer、COM)として独立した地位を得ています。
サン・マルタンと同時に
同じ日に、サン・マルタンもグアドループから分離しました。2つの島が同時に海外準県となったのです。21世紀のフランス海外領土再編を象徴する出来事でした。
サン・バルテルミーという領土
サン・バルテルミーの基本情報です。
- 正式名:サン・バルテルミー集合体(Collectivité de Saint-Barthélemy)
- 首都:グスタフィア(Gustavia)
- 面積:約25km²
- 人口:約1万人
- 公用語:フランス語
- 法的地位:フランスの海外準県
高級リゾート
サン・バルテルミーは、カリブ海の最高級リゾートです。「Saint-Barths(サン・バルツ)」の愛称で呼ばれ、世界の富裕層・セレブの聖地となっています。ヨーロッパやアメリカからプライベートジェットで訪れる人も多く、「カリブのモナコ」とも呼ばれます。
免税
そして、独自の免税制度を持っています。フランス領でありながら特別な税制が敷かれ、EUからも除外されて独自の関税を採用しています。消費税はありません。国旗の3つの王冠はスウェーデン王室を表しますが、現代のサン・バルテルミーは世界の富豪の遊び場となっている。興味深い変遷です。
人口1万人の島
サン・バルテルミーは、極めて小さな島です。面積はわずか25km²、人口は約1万人にすぎません。皆が顔見知りの島だといわれます。
まとめ:4つの統治者、3層の紋章
今回のサン・バルテルミー旗のまとめです。
- 公式旗:フランス三色旗
- 非公式島旗:白地+紋章(上から:3つのフルール・ド・リス+白いマルタ十字+3つの金の王冠+「OUANALAO」のリボン)
- フルール・ド・リス=フランス王国(1648年〜)
- マルタ十字=マルタ騎士団(1651-1665年、聖ヨハネ騎士団)
- 金の王冠=スウェーデン王国(1784-1878年、94年間)
- 「OUANALAO」=カリブ族先住民の島の名前
- 1493年、コロンブスが弟「バルトロメオ」にちなんで命名
- 1784年、スウェーデンがフランスから島を購入(対価はゴータブリ港の開放)
- 1878年、スウェーデンがフランスに売却、首都名「グスタフィア」はスウェーデン王にちなむ
- 2007年2月22日、グアドループから分離、フランス海外準県に
- 「Saint-Barths(サン・バルツ)」の愛称、世界の富裕層の聖地
- 面積約25km²、人口約1万人
- 「カリブのモナコ」、独自の免税制度
- グスタフィアはカリブ海で唯一のスウェーデン語名首都
フランスからマルタ、スウェーデン、そしてフランスへ。サン・バルテルミーの非公式旗は、4つの統治者を経たこの小さな島の複雑な歴史を、3層の紋章に込めた1枚です。