上が赤、下が白の横二色。モナコの国旗は、地中海に面する世界第2位に小さい独立国家の旗です。グリマルディ家(1297年から続く現存する世界最古の王朝のひとつ)の紋章の色であり、800年以上の歴史を持つ最古の旗のひとつでもあります。そしてインドネシア国旗とほぼ同じデザインという、世界の国旗のなかで最も混同しやすい1枚。今回はそんなモナコ国旗の話です。
まずは構成のおさらい
モナコ国旗の構成は、次のとおりです。
- 横2本の帯(上から):赤・白
- 比率:4:5(ほぼ正方形に近い)
色とシンボルの意味は、以下のとおりです。
- 赤:グリマルディ家の紋章の色
- 白:グリマルディ家の紋章の色
極めてシンプルな赤と白の2色で、世界の国旗のなかで最もミニマルなデザインのひとつです。
「インドネシア国旗との混同」
モナコ国旗には、世界的に有名な問題があります。
「双子の国旗」
モナコ国旗とインドネシア国旗は、ほぼ同じデザインです。
| モナコ | インドネシア | |
|---|---|---|
| 上 | 赤 | 赤 |
| 下 | 白 | 白 |
| 比率 | 4:5(ほぼ正方形) | 2:3(横長) |
| 赤の色合い | やや暗め | 明るい |
| 採用 | 1881年 | 1945年 |
国旗を見ただけでは区別が難しい、世界の国旗の中でも最も混同しやすいペアです。
「ポーランド国旗との関係」
さらに、ポーランド国旗も類似しています。ポーランドは上が白、下が赤で、モナコ・インドネシアとは順序が逆です。そのため「白赤系の3国家」として、しばしば一緒に語られます。
シンガポール・ポーランド・モナコ・インドネシアが、赤白系の旗ファミリーとして、世界の国旗の比較研究で扱われます。
1952年、外交合意
1952年4月29日、国際水路機関の会議で、モナコがインドネシアに国旗の変更を要請しました。両国の旗が似すぎているという理由です。しかしインドネシアは、1945年8月17日(独立記念日)から使っているため変更は不可、と応じました。
そこで両国は、比率を別に定義することで合意します。モナコは4:5(ほぼ正方形)、インドネシアは2:3(横長)と定めました。
外交的に解決された、世界で稀な国旗類似問題、というのが両国の現代の関係です。
グリマルディ家 ── 800年の王朝
モナコ国旗には、最も重要な歴史があります。
1297年1月8日、グリマルディ家のモナコ支配
1297年1月8日、フランチェスコ・グリマルディ(「マラドリザ(悪意ある)」)がモナコ城を奪取しました。修道士に変装してモナコ城に入り、ナイフを取り出して襲撃したと伝えられています。これにより、ジェノヴァ貴族のグリマルディ家がモナコの主となり、以後、約730年間にわたってモナコを統治することになります。
世界で現存する最古級の王朝のひとつとして、日本の天皇家・デンマーク王家・サウジアラビア王家などと並びます。
グリマルディ家の紋章
グリマルディ家の紋章は、赤と白の菱形です。この紋章の色が、モナコ国旗の色になりました。1297年から続く伝統的な色です。
8世紀以上前の紋章の色が、現代の国旗になっている。これは世界の国旗のなかで最も古い色の継承のひとつです。
1881年4月4日、現代版国旗
そして1881年4月4日、シャルル3世(Charles III)が現代版の国旗を正式に採択しました。赤と白の横二色で、以後、変更なしで現在まで使われています。
グレース・ケリー ── ハリウッド女優の妃
モナコには、世界的に有名な近代史があります。
1956年、グレース・ケリー結婚
1956年4月19日、グレース・ケリー(Grace Kelly、1929-1982)が、レーニエ3世モナコ大公(Rainier III)と結婚しました。アカデミー主演女優賞を受賞したハリウッド女優であり、アメリカ富豪の娘でもあった彼女が、モナコの王女になったのです。
「20世紀最大の結婚式」
この結婚式は、世界中で約3,000万人が視聴したと言われ、モナコの国際的な知名度が一気に上昇しました。シンデレラ・ストーリーとして伝説化していきます。
1982年、悲劇
しかし1982年9月14日、グレース・ケリーは自動車事故で死亡しました(享年52)。モナコのコルニッシュで運転中の出来事でした。モナコ国民は国葬で彼女を送りました。
国旗の赤と白は、グレース・ケリーの永遠の記憶でもある、というのが現代モナコの感情です。
モナコという国
モナコの基本情報です。
- 正式名:モナコ公国(Principauté de Monaco)
- 首都:モナコ・ヴィル(Monaco-Ville、旧市街)
- 面積:約2.02km²(世界で2番目に小さい独立国家、バチカンに次ぐ)
- 人口:約3.9万人
- 公用語:フランス語
- 準公用語:モネガスク語、イタリア語、英語
- 国家元首:アルベール2世(Albert II、2005年-)
「世界一裕福な国」
モナコは、国民1人当たりGDPで世界トップクラスの国です。国民1人当たりGDPは約20-25万ドルで世界1位、億万長者の密度は人口の約30%と世界一です。所得税がゼロのため、世界の富豪が移住してきます。
「カジノとモンテカルロ」
モナコ経済の柱のひとつが、カジノです。モンテカルロ・カジノは1863年に開業した世界最古級のカジノで、モナコ経済の主要な源となっています。ただし、モナコ国民は法律でカジノへの入場が禁止されており、入れるのは観光客のみです。
「フォーミュラ1とテニス」
モナコでは、世界的なスポーツイベントが開催されます。F1モナコ・グランプリは、モンテカルロ市街地コースで行われるF1の象徴的なレースです。テニスのモンテカルロ・マスターズは、ATP1000の権威ある大会です。1平方キロメートルあたりのスポーツイベント密度は世界一と言えるでしょう。
「世界で2番目に小さい国」
モナコの面積は約2.02km²で、バチカンの0.49km²に次ぐ小ささです。ニューヨークのセントラルパークよりも小さく、歩いて1日で全土を見て回れます。
ちなみに:「F1モナコGP」
モナコには、世界的に有名な現象があります。
モンテカルロ・コース
モナコGPコースは、市街地の公道を閉鎖して開催されます。全長約3.34kmで、最も狭く、最も技術的に難しいコースです。ドライバーがF1で最も勝ちたいレースとも言われています。
モナコ国旗の前で
モナコGPの優勝者は、シャンパン・ファイトの後、モナコ国旗の前でトロフィーを受け取ります。アルベール2世大公が直接表彰し、モナコ国旗が世界中に放映されます。
国旗の赤と白は、モナコGPの伝統色というイメージにもつながっています。
まとめ:800年のグリマルディ、世界一裕福な国の旗
今回のモナコ国旗のまとめです。
- 赤(上)と白(下)の横二色(4:5、ほぼ正方形)
- 1881年4月4日、シャルル3世が現代版を正式採択
- グリマルディ家(1297年から続く現存最古級の王朝)の紋章の色
- 1297年1月8日、フランチェスコ・グリマルディがモナコ城を奪取
- 8世紀以上の紋章の色の継承(世界最古級)
- インドネシア国旗とほぼ同じ(順序同じ、比率と色合いが微妙に違う)
- ポーランド国旗とは色の順序が逆(白上)
- 1952年4月29日、インドネシアとの「比率の差別化合意」で混同問題を解決
- 1956年、グレース・ケリーがレーニエ3世と結婚、20世紀最大の結婚式
- 1982年、グレース・ケリー自動車事故死
- 現国家元首はアルベール2世(2005年-)
- 面積約2.02km²、世界で2番目に小さい独立国家(バチカンに次ぐ)
- 国民1人当たりGDP世界1位(約20-25万ドル)、所得税ゼロ
- 人口の約30%が億万長者、世界一の富豪密度
- モンテカルロ・カジノ(1863年開業、モナコ国民は入場禁止)
- F1モナコGP、モンテカルロ・マスターズ(テニス)の開催地
800年前の紋章の色が、現代の国旗に。モナコの国旗は、世界で最も古い王朝のひとつと、現代の富裕国家を、最もシンプルな赤と白の2色に込めた1枚です。