黄と黒の縞、赤と白の十字。4つに分かれた、ひときわ派手な紋章旗。これがメリーランドの旗、アメリカ東海岸の州の旗です。アメリカの州旗で唯一、イギリス貴族の家紋(紋章)をそのまま使った旗。南北戦争で対立した色が、戦後ひとつに合わさった物語を持つ1枚。今回はそんなメリーランドの旗の話です。


まずは構成のおさらい

メリーランド旗の構成は、次のとおりです。4つに分かれた紋章のデザインになっています。

  • カルバート家の色:黄と黒の縞(斜め帯で反転する)
  • クロスランド家の色:赤と白に、先が三つ葉の十字(クロス・ボトニー)

色とシンボルの意味は、以下のとおりです。

  • 黄と黒:カルバート家(父方)
  • 赤と白と十字:クロスランド家(母方)

4分割の、まるで中世のような家紋の旗。アメリカでも極めて異色の1枚です。


「貴族の家紋がそのまま州旗」

メリーランド旗の、最大の特徴を見ていきます。

カルバート家の紋章

旗のもとになっているのは、カルバート家の紋章です。カルバート家(初代ボルティモア卿)は、メリーランドの植民地領主でした。初代ボルティモア卿ジョージ・カルバートが、父方カルバート家(黄と黒)と母方クロスランド家(赤と白)の色を組み合わせたものです。

アメリカで唯一

この旗のユニークさは、アメリカの州旗で唯一、イギリスの貴族の家紋をそのまま使った点にあります。他の州旗の多くが青地に紋章を配しているのに対し、ひときわ中世ヨーロッパ的です。

新大陸の州旗なのに、デザインは中世イングランドの家紋そのもの。際立った個性です。


「南北戦争で分かれた色」

メリーランド旗の、意外な物語を見ていきます。

旗は南北戦争の後にできた

実は、現在の旗は古いものではありません。デザイン自体は17世紀のカルバート家の紋章ですが、現在の旗としての姿は南北戦争後に生まれました。植民地時代には、黄と黒のカルバート家の色だけが旗として知られていました。

カルバートの色は北、クロスランドの色は南

そして、南北戦争での対立がありました。黄と黒の「メリーランドの色」は、連邦(北部)にとどまった州と結びつきました。一方、南部に共感する人々は、赤と白のクロスランド家の色を「分離の色」として用いました。南軍に加わったメリーランド出身者は、赤白とクロス・ボトニーで出身地を示しました。

戦後、ひとつに合わさった

戦後、和解の旗が現れます。カルバート(黄黒)とクロスランド(赤白)の両方を組み合わせた旗です。かつて分かれて戦った色が、ひとつに合わさり、州民の再結合を象徴しました。そして1904年、正式に州旗として採択されました。

北と南で分かれて戦った色が、戦後ひとつの旗に合わさった。そんな和解の物語です(歴史的経緯は中立に記述しています)。


メリーランドという地域

メリーランドの基本情報です。

  • 正式名:メリーランド州(State of Maryland)
  • 州都:アナポリス(Annapolis)
  • 面積:約3.2万km²
  • 人口:約620万人
  • 公用語:英語
  • 法的地位:アメリカ合衆国の州(7番目、元の13植民地の1つ)

「メアリーの土地」

州名「メリーランド」は、王妃の名にちなみます。イングランド王チャールズ1世の王妃ヘンリエッタ・マリアにちなんだもので、「メアリーの土地」という意味です。

「カトリックの避難地として」

メリーランドは、カルバート家がカトリック教徒の避難地として築いた土地です。1649年のメリーランド寛容法は、宗教的寛容の初期の例として知られています。

「アナポリスと青いカニ」

アナポリスには、アメリカ海軍兵学校があります。また、チェサピーク湾のブルークラブ(青いカニ)も、この地の名物です。


まとめ:貴族の家紋の旗、メリーランド

今回のメリーランド旗のまとめです。

  • 4分割の紋章旗:カルバート家の黄と黒の縞、クロスランド家の赤と白と三つ葉の十字(クロス・ボトニー)
  • 黄と黒はカルバート家(父方)、赤と白と十字はクロスランド家(母方)
  • 植民地領主カルバート家(初代ボルティモア卿)の紋章がもと
  • アメリカの州旗で唯一、イギリス貴族の家紋をそのまま使った旗(極めて中世ヨーロッパ的)
  • デザインは17世紀のものだが、現在の旗としての姿は南北戦争後に成立
  • 植民地時代は黄と黒のカルバート家の色だけだった
  • 南北戦争で、黄黒は連邦(北)にとどまった州、赤白は南部に共感する人々の「分離の色」に
  • 戦後、両方を組み合わせた旗が現れ、州民の再結合を象徴、1904年に正式採択
  • 州名は王妃ヘンリエッタ・マリアにちなむ「メアリーの土地」
  • カルバート家がカトリックの避難地として築き、1649年メリーランド寛容法
  • アナポリスにアメリカ海軍兵学校、チェサピーク湾のブルークラブ
  • 元の13植民地の1つ、面積約3.2万km²、人口約620万人、州都アナポリス

貴族の家紋が、そのまま州旗に。メリーランドの旗は、中世イングランドの紋章と、南北戦争の和解を1枚に重ねた、アメリカで最も紋章的な旗です。