14本の赤と白の横縞、左上の青いカントンに黄色の三日月と14角星。マレーシアの国旗、ジャルル・ゲミラン(Jalur Gemilang、「栄光の縞」)です。アメリカ星条旗に強く影響を受けた、東南アジアの連邦国家の旗です。14本の縞と14角星は、14の州(マラヤ11州+サバ+サラワク+シンガポール)を象徴しています。1947年、29歳の建築家が3日で4案を提出し、その1案が選ばれたという、現代的な誕生エピソードもあります。今回はそんなマレーシア国旗の話です。
まずは構成のおさらい
マレーシア国旗の構成は、次のとおりです。
- 横14本の帯:赤と白を交互に(赤7本、白7本)
- 左上のカントン:青い長方形
- 黄色の三日月:開口部右向き
- 黄色の14角星:ビンタン・プルセクトゥアン(連邦の星)
色とシンボルの意味は、以下のとおりです。
- 赤と白の14本:14の州(マレーシア連邦)
- 青のカントン:マレーシア国民の団結
- 黄:マレーシア統治者(ヤン・ディプルトゥアン・アゴン)の色
- 三日月:イスラム教(国教)
- 14角星:14の州の統一
14本の縞と14角星が、いずれも14の州を表すという、極めて明快なシンボリズムです。アメリカ星条旗(13本のストライプ+50の星)の影響を受けつつ、独自のイスラム・東南アジア国家のアイデンティティを表現した1枚です。
アメリカ星条旗との関係
マレーシア国旗の、世界的に有名な特徴を見ていきます。
アメリカ星条旗との類似
アメリカ国旗とマレーシア国旗を比べると、次のようになります。
| アメリカ | マレーシア | |
|---|---|---|
| ストライプ | 13本(赤・白) | 14本(赤・白) |
| カントンの色 | 青 | 青 |
| カントンの中 | 50の白い星 | 黄の三日月+14角星 |
| 採用 | 1777年(13星)/1960年(50星) | 1950年(11縞)/1963年(14縞) |
なぜ似ているか
マレーシア国旗が星条旗に似ている理由には、諸説あります。アメリカ星条旗の影響(連邦国家のシンボル)を受けたという説、イギリス植民地時代の海軍旗の影響だという説、そして東南アジアで「ストライプ+カントン」というフォーマットを採用したという見方です。
リベリアとマレーシアは、アメリカ星条旗系の国旗の代表だというのが、世界の国旗マニアの解釈です。
モハマド・ハムザ ── 29歳の建築家
マレーシア国旗のデザイナーは、モハマド・ハムザ(Mohamed Hamzah)です。
1947年、国旗コンテスト
1947年、マラヤ連邦(Federation of Malaya)の成立準備が進むなか、国旗デザインの全国コンテストが開かれました。応募は多数にのぼりました。モハマド・ハムザは、当時29歳の建築家で、公共事業省(JKR)に勤務し、ジョホール・バルに住んでいました。
3日で4案
ハムザは、多忙な仕事の合間に、3日間で4つの国旗案を提出しました。「3日で4案」という驚異的なスピードで、そのうちの1案が当選しました。
1950年5月26日、マラヤ連邦旗
1950年5月26日、マラヤ連邦旗が正式に採択されました。11本の赤白縞に、カントン、三日月、11角星を組み合わせ、マラヤ11州を象徴する旗でした。
1963年9月16日、マレーシア連邦成立
そして1963年9月16日、マレーシア連邦が成立します。マラヤ11州にサバ、サラワク、シンガポールが加わって14州となり、国旗も14本の縞と14角星に変更されました。
1965年、シンガポール分離
1965年8月9日、シンガポールがマレーシア連邦から分離独立しました。しかしマレーシア国旗の「14」は維持され、その内訳は13州+連邦直轄領(クアラルンプール等)の14とされました。
これは、アメリカ国旗が建国時の13植民地を13本のストライプとして維持しているのと同じだ、というのがマレーシアの維持の理由です。
「ジャルル・ゲミラン」 ── 栄光の縞
マレーシア国旗には、愛称があります。
1997年、命名
1997年、当時のマハティール・モハマド首相が命名しました。「Jalur Gemilang」は「栄光の縞」を意味し、マレーシアの継続的な成長と成功を象徴しています。
国旗そのものに国民的な愛称があるという点では、ダンネブロー(デンマーク)やユニオン・ジャック(イギリス)と並ぶ、世界の親しまれる国旗のひとつです。
マレーシアという国
マレーシアの基本情報です。
- 正式名:マレーシア(連邦制君主国)
- 首都:クアラルンプール(Kuala Lumpur)、行政首都はプトラジャヤ
- 面積:約33万km²
- 人口:約3,300万人
- 公用語:マレー語(Bahasa Melayu)
- 宗教:イスラム教(約61%)、仏教(約20%)、キリスト教(約9%)、ヒンドゥー教(約6%)
「世界で唯一の選挙君主制」
マレーシアには、世界的に独特な政治制度があります。9つのマレー州が伝統的なスルタンを持ち、5年ごとに、9人のスルタンから1人がヤン・ディプルトゥアン・アゴン(連邦王)に選出されます。世界で唯一、選挙で選ばれる君主制です。
国旗の黄は、この連邦王の色を表しています。
「多民族国家」
マレーシアは、東南アジアで最も民族多様性が高い国のひとつです。マレー人が約62%、中国系が約23%、インド系が約7%を占め、残りは先住民などです。
「東南アジアで最も近代化された国のひとつ」
マレーシアは経済発展が著しい国です。ペトロナス・ツインタワー(452m)は、1996年から2004年まで世界最高のビルでした。電子産業やパーム油などが経済の柱となっており、東南アジアの新興工業国として知られています。
「マレーシア航空370便」
マレーシアには、21世紀の悲劇もあります。2014年3月8日、マレーシア航空370便が南シナ海上空で消息を絶ち、乗員乗客239人が行方不明になりました。機体も遺体も完全には見つからず、航空史上最大級の謎とされています。
国旗の青は平和を象徴しますが、2014年の悲劇もまた、現代マレーシアの記憶の一部です。
まとめ:14の州、14本の縞、栄光の縞
今回のマレーシア国旗のまとめです。
- 14本の赤と白の横縞+左上の青いカントン+黄の三日月と14角星
- 1950年5月26日、マラヤ連邦旗として初採用(11本縞+11角星)
- 1963年9月16日、マレーシア連邦成立時に14本縞+14角星に変更
- 1965年シンガポール分離後も14維持(13州+連邦直轄領)
- デザイナーはモハマド・ハムザ(29歳の建築家、3日で4案提出)
- 1997年、マハティール・モハマド首相が「Jalur Gemilang(栄光の縞)」と命名
- 赤+白+青+黄の4色構成
- 三日月=イスラム教(国教)、14角星=14の州の統一
- アメリカ星条旗の影響(リベリアと並ぶ星条旗系国旗)
- 世界で唯一の選挙君主制、5年ごとに9人のスルタンから連邦王を選出
- 多民族国家:マレー人62%、中国系23%、インド系7%
- ペトロナス・ツインタワー(452m)、東南アジアの経済大国
- 2014年マレーシア航空370便消失事件
14の州を14本の縞と14角星で団結させる。マレーシアの国旗は、アメリカ星条旗系の連邦国家旗と、イスラム諸国の月星旗の融合を、独特のデザインに込めた1枚です。