赤地に、鎧をつけた3本の脚が、風車のように回転する。マン島の旗です。イギリスとアイルランドの間のアイリッシュ海に浮かぶ王室属領の旗で、この3本脚はトリスケリオン(三脚巴)と呼ばれる古代のシンボルです。「どう転んでも立つ」という標語を持つ1枚。今回はそんなマン島旗の話。


まずは構成のおさらい

マン島旗の構成は、次のとおりです。

  • 背景:赤
  • 中央:トリスケリオン(鎧をつけた3本の脚+金の拍車)が時計回りに回転

シンボルの意味は、以下のとおりです。

  • 3本の脚:マン語でny tree cassyn(「3本の脚」)
  • 標語:「Quocunque Jeceris Stabit(どちらに投げても、立つ)」
  • 意味:強さ・前進・自立を表し、逆境のなかでも立ち続けることを象徴する

3本の脚が回る、世界で最もユニークな旗の1つ。一度見たら忘れられない1枚です。


「3本の脚」 ── トリスケリオンの謎

マン島旗の、最も特徴的なシンボルを見ていきます。

トリスケリオンとは

トリスケリオン(triskelion、三脚巴)は、3本の脚(または3つの渦巻き)が中心から放射状に伸びる古代のシンボルです。ミケーネ文明やリュキアでも使われていました。

マン島版の起源は不明

しかし、マン島版の正確な起源は不明です。スカンジナビアでよく見られたシンボルであり、1266年以前、ノルウェー人(ノース人)が支配していた時代に伝わった可能性があります。13世紀後半の中世文書と、ティンワルド議会の儀礼の剣で確認できます。

古代から伝わる、起源のはっきりしない神秘の3本脚。ロマンあるシンボルです(諸説あり)。

「どちらに投げても立つ」

トリスケリオンには標語があります。「Quocunque Jeceris Stabit」、すなわち「どちらに投げても、立つ」です。3本脚はどう転んでも立つ。それはマン島の人々の不屈の精神を表しています。

サイコロのように、どう投げても立つ3本脚。力強いメッセージです。


1932年 ── 公式旗に

マン島旗の制定史を見ていきます。

13世紀の紋章がベース

マン島旗は、マン島紋章がベースになっています。紋章は13世紀に遡り、ティンワルド(マン島議会)の儀礼の剣にも刻まれています。

1932年12月1日、公式採択

そして1932年12月1日、公式旗となりました。3本の脚はすべて時計回りを向き、1本の脚が真下にまっすぐ植わるようバランスが取られています。


マン島という領土

マン島の基本情報です。

  • 正式名:マン島(Isle of Man、マン語:Ellan Vannin)
  • 首都:ダグラス(Douglas)
  • 面積:約572km²
  • 人口:約8.4万人
  • 公用語:英語(マン島ゲール語も)
  • 法的地位:イギリス王室属領(Crown Dependency)

「イギリスの一部ではない」

マン島は、独特の法的地位を持ちます。イギリス王室属領でありながら、イギリス(UK)の一部ではなく、EUにも加盟していませんでした。独自の議会・法律・通貨(マン島ポンド)を持ち、チャンネル諸島(ジャージー・ガーンジー)と並ぶ王室属領です。

イギリス王室に属するが、UKでもEUでもない。複雑な地位です。

「ティンワルド」 ── 世界最古級の議会

マン島には、世界に誇る歴史があります。ティンワルド(Tynwald)です。西暦979年から続く、世界最古級の継続的に機能する議会で、1000年以上の歴史を持ちます。ヴァイキング(ノース人)が起源です。

国旗の3本脚が刻まれた剣を持つ、千年の議会。誇り高い歴史です。

「マンクス・キャット」

マン島には、世界的に有名な生き物もいます。マンクス(Manx cat)です。尻尾のない猫で、マン島原産の品種。島の名前が、世界の猫の品種になりました。

「マン島TTレース」

マン島には、世界的に有名なイベントもあります。マン島TTレース(Isle of Man TT)です。公道を使うオートバイレースで、世界一危険なバイクレースともいわれます。1907年から続く伝統です。


まとめ:回る3本脚、千年の島

今回のマン島旗まとめ。

  • 赤地+鎧をつけた3本の脚(金の拍車)が時計回りに回転するトリスケリオン
  • マン語で ny tree cassyn(「3本の脚」)
  • 標語「Quocunque Jeceris Stabit(どちらに投げても立つ)」、強さ・前進・自立の象徴
  • トリスケリオンは古代のシンボル(ミケーネ文明・リュキアでも使用)
  • マン島版の起源は不明、1266年以前のノルウェー支配時代に伝わった可能性(諸説あり)
  • 13世紀後半の中世文書とティンワルド議会の儀礼の剣で確認
  • 1932年12月1日、公式採択(13世紀のマン島紋章がベース)
  • 3本の脚はすべて時計回り、1本が真下に植わる
  • イギリス王室属領(UKの一部でもEUでもない)、独自の議会・通貨
  • ティンワルド=西暦979年から続く世界最古級の議会(1000年以上)
  • マンクス(尻尾のない猫)の原産地
  • マン島TTレース(世界一危険ともいわれる公道バイクレース、1907年から)
  • 面積約572km²、人口約8.4万人、首都ダグラス

どう投げても立つ、回る3本脚。マン島の旗は、ヴァイキングの時代から続く島の不屈の精神を、古代の神秘的なシンボルに込めた1枚です。