北欧の国旗ってなんとなく似てますよね。十字が描かれていて、配色が違うだけ、みたいな。でもよく見ると、それぞれちゃんと由来があって面白い。今回はそのなかでも「えっ、そうなの?」が多いアイスランドの国旗の話です。
まずは構成の確認から
アイスランド国旗は青地に、白で縁取られた赤い十字。北欧十字と呼ばれるあのデザインです。
北欧諸国の国旗はほとんどがこの形式で、デンマーク・スウェーデン・ノルウェー・フィンランドとアイスランドが「北欧十字グループ」です。色の組み合わせがそれぞれ違うだけで、構造はほぼ同じ。地理的・歴史的なつながりが、旗にもしっかり表れています。
「青=海」じゃない、というけっこう意外な話
「青はアイスランドを囲む海」と思いがちじゃないですか?でも、これがじつはちょっと違うんです。
デザイナーのマッティアス・ソルザルソン(Matthías Þórðarson)は、青を「fjallablámi」(フィヤトラブラウミ)、つまり「遠くに見える山々の青み」として説明したと伝えられています。海ではなく、山の青。氷河と山岳地帯が広がるアイスランドらしい解釈ですよね。
ただし時代やソースによっては「青は山と海と空をあわせて表す」と語られることもあって、解釈には少し幅があります。それでも「山の青」というのは、デザイナー本人の語りとして広く伝わっている、というのが押さえどころです。
白は氷河と雪、赤は火山活動と溶岩。「氷と火の国」と呼ばれるこの国の自然をそのまま3色に落とし込んだ、と思うとすごく腑に落ちます。
ちなみにアイスランドは、いまも活火山がいくつもある国。ファグラダルスフィヤル火山が2021年から断続的に噴火しているのは、ニュースで見たことがある人もいるかもしれません。
港で旗を没収された事件が、独立運動を加速させた
1913年6月12日、首都レイキャビクの港でちょっとした事件が起こります。
当時アイスランドはまだデンマークの統治下で、独自の国旗を公式に持っていませんでした。エイナル・ペートゥルソン(Einar Pétursson)というアイスランド人男性が、当時アイスランド人の間で非公式に使われていた白青十字旗(hvítbláinn)を小舟のマストに掲げて港を渡っていました。
ところがそれを見ていたデンマーク海軍の砲艦「アイスランドス・ファルク」がこの旗を問題視し、旗を没収してしまいます。
この出来事はアイスランド国民の怒りに火をつけ、街には青と白の旗が次々と掲げられました。「自分たちの旗が欲しい」という機運が一気に高まり、5カ月後には国旗制定を求める決議が採択されています。
そして1915年6月19日、デンマーク国王クリスチャン10世の勅令によって、マッティアスがデザインした新しい旗(青地・白縁・赤十字)がアイスランド水域で使うことを認められ、1918年にアイスランド王国の国旗として正式に採用されました。
ちなみにマッティアスが1906年に最初に提案した旗は、じつは「青地に白い十字」だけ(hvítbláinnの流れを汲むデザイン)でした。1915年の勅令で「他国の旗との混同を避けるため赤十字を加える」ことが定められ、現在のあの3色構成になりました。なので「青=山、白=氷河、赤=火山」の3色解釈は、1915年に赤が加わってから語られるようになった意味付け、という見方もできます。
旗の歴史って、こういう「現場の事件」が転換点になることがけっこうあるんです。
デザイナーは、アイスランド国立博物館の館長だった
アイスランド国旗の現行デザインを手がけたのは、マッティアス・ソルザルソンという人物です。
彼は1908年から1947年まで、アイスランド国立博物館の館長(兼国家考古官)を務めた、文化・歴史の専門家でした。つまり1906年に最初の旗案を提案した時点で、すでに同博物館の館長だったわけです。「国の文化を守る人」が「国の象徴のデザイン」も手がけた、というのは絵的にも収まりがいい話ですよね。
共和国旗として確定したのは1944年、独立と同じ日
アイスランドが完全独立してデンマークから離れたのは、1944年6月17日。第二次世界大戦のさなか、デンマーク本国がドイツに占領されていた間に、アイスランドは国民投票を経て共和国として独立しました。
この同じ日、これまで「個人連合の王国旗」として使われていたマッティアスのデザインが、共和国の国旗として正式に確定されました。独立の日が、そのまま国旗の日。タイミングがそろってると、旗を見る目もちょっと変わってきますよね。
6月17日は今でも「アイスランド共和国記念日」として祝日になっています。
まとめ:青いのは海じゃなくて、山だった
今回のアイスランド国旗まとめ。
- 北欧十字のひとつ、青地に白縁取りの赤い十字
- 青はデザイナーが「fjallablámi(遠くに見える山の青み)」と説明したと伝わる(解釈には幅あり)
- 白は氷河と雪、赤は火山と溶岩。氷と火の国を表現
- 1913年6月12日の港での旗没収事件(白青旗 hvítbláinn)が独立運動を加速させた
- 設計者のマッティアス・ソルザルソンは、1908〜1947年に国立博物館長を務めた人物(1906年の原案は青+白十字、赤十字は1915年の勅令で追加)
- 共和国旗としての正式確定は1944年6月17日、共和国成立と同じ日
「青=海」って、なんとなくみんな思いがちですよね。それが実は山だった、というのが今回いちばんお伝えしたかった話です。