紺色の地、赤い縁取り、中央にアーモンド型の紋章。そのなかにはハガッニャ湾のヤシの木とプロア(カヌー)、そして赤い「GUAM」の文字が描かれています。グアムの旗は、西太平洋・ミクロネシアに位置するアメリカ合衆国の未編入領土の旗です。1917年、ヘレン・ポールという女性が、ハガッニャ湾の実際の風景をスケッチしてデザインしました。世界の旗のなかでも珍しい風景画の旗です。今回はそんなグアム旗の話です。


まずは構成のおさらい

グアム旗の構成は、次のとおりです。

  • 背景:ダークブルー(紺色)
  • 周囲:赤い縁取り
  • 中央:アーモンド型(ヴェシカ・ピシス)の紋章

紋章のなかには、ハガッニャ湾の風景が描かれています。海岸に1本立つココヤシの木、湾に浮かぶプロア(チャモロ族の伝統的なカヌー)、遠くにはトゥモン湾やハガッニャ・クリフの崖が見え、空と海が広がり、赤い「GUAM」の文字が添えられています。

色とシンボルの意味は、以下のとおりです。

  • 紺色(青):太平洋・ミクロネシアの海
  • 赤の縁取り:第二次大戦とスペイン統治時代で流された血
  • ココヤシ:グアムの自然・島の生命
  • プロア:チャモロ族の伝統文化・航海

国旗のなかに、実際のハガッニャ湾の風景を描く。これは世界で唯一の風景画の旗です。


「ハガッニャ湾の実際の風景」

グアム旗の、世界的に独特な特徴を見ていきます。

アーモンド型の紋章

紋章はアーモンド型(Vesica Piscis)です。ヴェシカ・ピシスは2つの円が重なってできる形で、古代からキリスト教や幾何学で重要なシンボルとされてきました。グアムの石器を象徴するという解釈や、トウラ・ハウス(チャモロ族の伝統的支柱の頭部)の形だという解釈もあります。

ハガッニャ湾の風景

紋章のなかには、実際のハガッニャ(旧アガニア)の風景が描かれています。ハガッニャ川の河口、ハガッニャ湾、そしてトゥモン方面の遠くの崖。手前にはココヤシとプロアが配されています。

実際の地理的風景を、国旗の中心に描く。これは世界の旗のなかで唯一であり、アメリカ星条旗のような抽象的デザインとは正反対です。


ヘレン・ポール ── 1917年の女性デザイナー

グアム旗の起源を見ていきます。

ヘレン・ポール

旗のデザイナーは、ヘレン・ポール(Helen Paul)という女性です。1917年、グアムの風景をスケッチし、ハガッニャ川の河口にあるココヤシ、プロア、遠くの崖を描きました。

1917年、ロイ・キャンベル・スミス知事が採用

1917年、ロイ・キャンベル・スミス・グアム知事が、ヘレン・ポールのデザインを採用しました。この時点ではまだ赤い縁取りはなく、「グアム領土の旗」として用いられました。

1948年、現代版

そして1948年2月9日、チャールズ・アラン・パウナル軍政総督が赤い縁取りを追加しました。第二次大戦の傷跡を反映したもので、これによって現代版が完成しました。

1917年のヘレン・ポールのスケッチが、現代の国旗の原型となった。これがグアム旗の物語です。アメリカ領サモア(高校生ファレティ・ソトアがデザイン)と並ぶ、若い才能・女性によるアメリカ領土旗のデザインといえます。


グアムという領土

グアムの基本情報です。

  • 正式名:グアム(Guam、チャモロ語:Guåhån)
  • 首都:ハガッニャ(Hagåtña、旧アガニア)
  • 面積:約544km²
  • 人口:約16万人
  • 公用語:英語・チャモロ語
  • 法的地位:アメリカ合衆国の未編入領土

「アメリカで最も西の領土」

グアムは、アメリカ領土で最も西に位置します。「Where America's Day Begins」と呼ばれ、アメリカで最初に日付が変わる地です。グアムが朝のとき、ハワイやアラスカはまだ前日です。

国旗の太陽が、まずグアムから昇る。これがアメリカ領土としてのアイデンティティです。

「チャモロ族」

グアムの先住民族は、チャモロ族(Chamorro)です。約3,500年の歴史を持ち、古代チャモロ社会のラッテ・ストーン(伝統的な石の支柱)が知られています。

「第二次大戦の激戦地」

グアムには、苦難の歴史があります。1941年12月、日本軍がグアムを占領しました。1944年7〜8月にはグアムの戦いが起こり、アメリカが奪回します。ここは太平洋戦争の重要な戦闘地であり、多くの民間人犠牲者を出しました。

国旗の赤い縁取りは、こうした戦争の血を表しています。

「米軍基地の島」

グアムは、米軍の重要な前線基地でもあります。国土の約30%が米軍基地で、アンダーセン空軍基地やグアム海軍基地が置かれ、「太平洋の不沈空母」と呼ばれています。

「観光地」

そして、日本人観光客にも人気です。ハワイの代わりとして近くて手軽で、ロタ島・サイパン島などと並ぶミクロネシアの観光地となっています。


まとめ:1917年の風景画、ハガッニャ湾の旗

今回のグアム旗のまとめです。

  • 紺色地に赤い縁取り、中央にアーモンド型紋章
  • 紋章の中の風景は、ハガッニャ湾・ココヤシ・プロア(チャモロ伝統カヌー)・遠くの崖・「GUAM」の赤文字
  • 1917年、女性ヘレン・ポールがハガッニャの風景をスケッチしてデザイン
  • 1917年、ロイ・キャンベル・スミス知事が採用(赤縁取りなし)
  • 1948年2月9日、チャールズ・アラン・パウナル軍政総督が赤縁取りを追加
  • 紺は太平洋、赤縁取りは第二次大戦とスペイン統治の血、ココヤシは島の生命、プロアはチャモロ伝統文化
  • 世界で唯一、実際の地理的風景を国旗中心に描いた旗
  • 1898年の米西戦争でスペインからアメリカに割譲
  • 1941〜1944年の日本占領、1944年7〜8月のグアムの戦いでアメリカが奪回
  • アメリカ領土で最も西、「アメリカの日が最初に始まる地」
  • チャモロ族の先住民、約3,500年の歴史
  • 国土の約30%が米軍基地、太平洋の重要拠点

1917年に女性が描いた、ハガッニャ湾の風景。グアムの旗は、世界で唯一の風景画の旗であり、チャモロ伝統と現代アメリカ領土の融合を体現する1枚です。