赤・青・緑の横三色に、細い白線が2本。ガンビアの国旗です。国名の由来になっているガンビア川が、そのまま真ん中の青で描かれている、というシンプルなのに地理的にぴったりはまった旗です。しかもデザインしたのは、プロのデザイナーではなく会計士だった、というのも面白いところ。今回はそんなガンビア国旗の話です。
まずは構成のおさらい
ガンビア国旗の構成は、上から赤、白(細い区切り線)、青、白(細い区切り線)、緑の順です。
3つの主要な色(赤・青・緑)が均等な幅で並び、その間に細い白い帯が入っているという、ちょっと変わった5本構成です。白い線は単なる装飾でも、3色を分離するためのものでもなく、3色を結ぶ団結のシンボルとしての意味を持っています。
色の意味は明快です。
- 赤:太陽(ガンビアは北緯13度、太陽がぎらつく国)とサバンナ
- 青:ガンビア川。国名の由来になった、国の最大の地理的特徴
- 緑:森林と農業(落花生・米・キビなど)
- 白(2本):団結と平和
真ん中の青は、本物の川
ガンビア国旗の最大の特徴は、真ん中の青がガンビア川という具体的な川を表していることです。
ガンビア川とは
ガンビア川(Gambia River)は、ギニア高地から流れ出て、セネガル国内を経由し、ガンビア国土をほぼ真っ直ぐ東西に貫いて大西洋に注ぐ、長さ約1,120kmの川です。
そして驚くべきは、ガンビアという国の形そのものが、この川に沿って作られていることです。
国土が川を「囲んでいる」
地図を見るとわかりやすいのですが、ガンビアの国土は、ガンビア川を中心に、その両岸の細長い土地に広がっている形をしています。東西の長さは約480kmある一方で、南北の幅は最大でも25kmほどしかありません。
川を囲むように、両岸25kmずつの帯状の国土。これがガンビアです。川がないと国そのものが成立しないと言ってもいいくらいで、国名「Gambia」もガンビア川から取られています。
つまり国旗の真ん中の青いストライプは、国土の真ん中を東西に流れるガンビア川をデザインの真ん中に置く、という、地理を旗にそのまま反映させたものなのです。
アフリカ大陸最小の国
ガンビアという国そのものについても、ちょっと触れておきます。
ガンビアは、島国を除けばアフリカ大陸最小の国家です。面積は11,295平方キロメートルで、北海道の約7分の1、アメリカのコネチカット州ほどしかありません。人口は約250万人で、大西洋沿岸を除き、ぐるりとセネガルに囲まれています。
地図を見ると、セネガルの腹のなかに細長く食い込んでいるガンビア、という奇妙な形が一目でわかります。
なぜこんな細長い国境になった?
これはヨーロッパ列強の植民地分割の歴史によるものです。
17世紀、イギリスがガンビア川を伝って西アフリカ内陸に進出し、川の両岸を支配下に置きました。一方でフランスは周辺一帯(現在のセネガル)を支配します。両国が植民地境界を交渉するなかで、1889年の英仏協定により、ガンビア川の主軸から南北にそれぞれ約10マイル(約16km)の範囲をイギリス領と決定しました。
つまり、川の主軸から左右10マイルずつを区切って国境にしよう、という、自然地形ではなく「線引き」で作られた国境が、いまのガンビアの形になっているわけです。
ガンビア川がガンビアという国を生んだ、という地理的経緯が、そのまま国旗のデザインに反映されています。
会計士がデザインした国旗
ガンビア国旗のもうひとつの面白いポイントは、デザイナーが会計士だったということです。
その人物はパ・ルイ・トマシ(Pa Louis Thomasi、現地では「Pa」は敬意を込めた呼称)といい、独立直前のガンビアで民間の会計事務所で働いていた会計士でした(具体的な事務所名は資料によって表記が揺れているため、ここでは特定を避けます)。
1964年に開催された新国旗デザインコンテストで、彼の案が選ばれます。アンティグア・バーブーダのレジナルド・サミュエル(美術教師)、UAEのアル・マイナ(19歳の応募者)、アメリカのボブ・ヘフト(17歳の高校生)など、プロのデザイナーではない人物が国の旗を設計した例はいくつかありますが、ガンビアもそうした稀有な例のひとつです。
会計士が考えた、国の地理を3色と2本の細い白線にまとめた図案が、独立から60年たった今もそのまま使われている、というのはなかなか粋な話です。
1965年2月18日、真夜中の独立
ガンビアは1965年2月18日、イギリス連邦から独立しました。そして同日の真夜中(0時)、新しい国旗が初めて掲揚されました。
それまでのガンビアの歩みは、次のとおりです。1664年にイギリスがガンビア川河口の島(セントメリー島)を獲得し、19世紀後半にイギリス領ガンビア植民地として正式化されました。1894年にはイギリス保護領となり、20世紀を通じてイギリス領であり続け、1965年に独立を迎えます。
つまり約300年にわたるイギリス支配の末の独立でした。新国旗は、イギリス支配からの解放と新しい国の誕生を象徴する1枚として、真夜中の独立式典で初めて空に上がりました。
政治色を持たない、稀有な選択
ガンビア国旗のもうひとつの特徴は、特定の政党の色を採用しなかったことです。
アフリカ諸国の多くは、独立運動を主導した政党のシンボルカラーを国旗に取り入れるパターンが多いものです。たとえばガーナはエンクルマの汎アフリカ主義の色、ナイジェリアはNCNC党・NPC党・アクションパーティの色を混合、アルジェリアはFLNの色、カーボベルデ(1975-1992)はPAIGCの色を取り入れています。
しかしガンビアは、特定の政党色を取り入れず、純粋に国そのものを象徴する色を選びました。
これは「政権が変わっても、旗は変わらない」という設計思想によるもので、結果として1965年から現在まで、ガンビア国旗は一度もデザインを変えていません。クーデタや政権交代を何度か経験しても、旗は不変です。政治を超えた象徴として60年間機能している、というのはなかなか珍しい例です。
まとめ:地理と政治超越のシンプル設計
今回のガンビア国旗のまとめです。
- 赤・白(細)・青・白(細)・緑の5本横帯(白以外の3色は均等幅)
- 赤は太陽とサバンナ、青はガンビア川、緑は森林と農業、白は団結と平和を表す
- 真ん中の青は、国名の由来となったガンビア川で、国土の真ん中を東西に貫く
- 国土は川に沿った細長い形で、南北幅は最大25km、島国を除けばアフリカ大陸最小の国家
- 国は大西洋沿岸を除いてぐるりとセネガルに囲まれている
- 1965年2月18日、イギリスからの独立日の真夜中に初掲揚された
- デザイナーは会計士のパ・ルイ・トマシ(Pa Louis Thomasi)で、コンテストで選ばれた
- 特定の政党色を取り入れず、政治を超えたシンプルな設計
- 1965年から60年間、一度もデザイン変更されていない
国の形そのものになっている川を、旗の真ん中に置く。ガンビアの旗は、地理が国の本質を決め、その本質が旗のデザインを決めた、というシンプルだけど美しい1枚です。