白い地に、空色の斜めの帯。ガリシアの旗、スペイン北西部、ポルトガルの上にある自治州の旗です。紋章には金の聖杯(カリス)が描かれていますが、実はこれ、地名の語呂合わせから生まれたもの。巡礼の終着点サンティアゴ・デ・コンポステラを擁し、ケルトの文化を自認する地でもある1枚。今回はそんなガリシアの旗の話です。
まずは構成のおさらい
ガリシア旗の構成は、次のとおりです。
- 背景:白
- 帯:空色(青)の斜めの帯(左上から右下へ)
- 公式(行政)旗:中央にガリシアの紋章を加える
色とシンボルの意味は、以下のとおりです。
- 白と青:聖母マリアの色
- 青い斜め帯:ア・コルーニャの海事旗に由来します
- 紋章の聖杯:ガリシアの象徴です
白地に青い斜め帯、そして紋章には金の聖杯という、北西スペインの旗です。
「青い斜め帯」 ── 移民が見た港の旗
ガリシア旗の、意外な由来を見ていきます。
ア・コルーニャの港の旗
白地の青い斜め帯は、港の旗に由来します。19世紀末から20世紀初めにかけて、ア・コルーニャの海事司令部の旗に由来するものです。港の建物にはためくその旗を、故郷を離れるガリシアの移民たちが見ていました。白と青は、聖母マリアの色とも言われます。
故郷を離れる移民たちが港で見た旗が、ガリシアの旗になった。移民の地ガリシアらしい物語です。
「紋章の聖杯」 ── 実は語呂合わせ
ガリシア旗の、最も面白い話です。
金の聖杯と7つの十字
ガリシアの紋章は、青地に、銀の聖体(ホスチア)を載せた金の聖杯(カリス)を描いたものです。その周りには7つの銀の十字があり、ガリシアの7つの歴史的な州を表しています。
「カリス」と「ガリシア」の語呂合わせ
この聖杯には、ユニークな起源があります。聖杯のモチーフは、地名の語呂合わせ(キャンティング・アームズ)に由来するものです。ノルマン語のcalice(聖杯)とGalyce(ガリシア)の音の近さから生まれたとされ、13世紀イングランドのシーガーズ・ロールには、ガリシア王の紋章として3つの金の聖杯が描かれています。
「カリス(聖杯)」と「ガリシア」が似ているから聖杯という、中世の言葉遊びから生まれたシンボルです。聖体を載せた聖杯として、宗教的な意味も帯びています。
「ケルトと巡礼の地」
ガリシアには、2つの顔があります。
サンティアゴ・デ・コンポステラ
ガリシアの州都サンティアゴ・デ・コンポステラは、聖ヤコブ(サンティアゴ)が葬られたとされる地です。サンティアゴ・デ・コンポステラの巡礼路(カミーノ・デ・サンティアゴ)の終着点であり、世界中から巡礼者が歩いてやってきます。
ケルトの文化
ガリシアは、ケルトの文化を自認する地でもあります。バグパイプ(ガイタ)などケルト的な音楽文化があり、ブルターニュやウェールズなどと文化的に結びつきます。ただし、ガリシア語はロマンス語系のため「ケルト6民族」には数えられません(諸説あり)。
巡礼の終着点であり、ケルトを自認する大西洋の地。それがガリシアの個性です。
ガリシアという地域
ガリシアの基本情報です。
- 正式名:ガリシア自治州(Galicia/Galiza)
- 州都:サンティアゴ・デ・コンポステラ
- 面積:約2.9万km²
- 人口:約270万人
- 公用語:スペイン語・ガリシア語
- 法的地位:スペインの自治州
「ポルトガル語に近い言葉」
ガリシア語は、ポルトガル語に非常に近い言語です。中世のガリシア・ポルトガル語が、両者の共通の祖先にあたります。
「世界の果て」と移民
ガリシアには、フィステーラ(フィニステレ、「地の果て」)の大西洋岸があり、海の幸が豊かです。ラテンアメリカへの移民が多く、「ガジェゴ(ガリシア人)」がスペイン人一般を指す言葉になった国もあります。
まとめ:青い斜め帯と聖杯、ガリシア
今回のガリシア旗のまとめです。
- 白地+空色の青い斜め帯(左上から右下)、公式旗は中央にガリシアの紋章
- 白と青=聖母マリアの色、青い斜め帯=ア・コルーニャの海事旗に由来
- その旗を、故郷を離れるガリシアの移民たちが港で見ていた
- 紋章は青地に銀の聖体を載せた金の聖杯+7つの銀の十字(7つの歴史的な州)
- 聖杯は「calice(聖杯)」と「Galyce(ガリシア)」の語呂合わせ(キャンティング・アームズ)に由来
- 13世紀イングランドのシーガーズ・ロールにガリシア王の3つの金の聖杯
- 州都サンティアゴ・デ・コンポステラは聖ヤコブが葬られた地、カミーノ・デ・サンティアゴの終着点
- ガリシアはケルト文化を自認(ガイタ=バグパイプ)、ただしガリシア語はロマンス語系で「ケルト6民族」には非該当(諸説あり)
- ガリシア語はポルトガル語に非常に近い(中世ガリシア・ポルトガル語が共通祖先)
- フィステーラ(地の果て)、海の幸、ラテンアメリカへの移民の地
- 面積約2.9万km²、人口約270万人、州都サンティアゴ・デ・コンポステラ
白地に青い斜め帯と、語呂合わせの聖杯。ガリシアの旗は、巡礼とケルトと移民の大西洋の地を、移民が見た港の旗に重ねた1枚です。