緑・黄・青の横三色。ガボンの国旗です。シンプルな3色構成で「ふつうのアフリカの国旗」に見えるかもしれませんが、この旗はものすごく地理的に正確で、真ん中の黄色い帯が文字通り赤道を表しています。国土を赤道が真横に貫いているガボンならではの、地理がそのまま絵になった旗。今回はそんなガボン国旗の話です。
まずは構成のおさらい
ガボン国旗は、上から緑・黄・青の横三色(均等幅のトライバンド)です。文字も模様もありません。縦横比は3:4で、世界の国旗としてはちょっと珍しい正方形に近い比率です。
色の意味は、地理的に非常に明確です。
- 緑:赤道直下の熱帯雨林
- 黄:赤道そのもの、太陽、鉱物資源
- 青:南大西洋(西側の海岸)
上から森林、赤道、海。国土の生態系を縦に切って並べたら、そのまま旗になる、というロジックです。
真ん中の「黄色」は、本物の赤道
ガボン国旗の最大のポイントは、真ん中の黄色い帯が赤道を表していることです。
地理を確認すると、ガボンは赤道(緯度0度)が国土の真ん中を真横に通る国です。首都リーブルヴィルは北緯約0.4度とほぼ赤道直下にあり、国土の北半分は北半球、南半分は南半球に分かれます。黄色い帯で赤道を表現するのに、ガボンほどふさわしい国はありません。
世界には赤道が通る国が13ほどあります。エクアドル・コロンビア・ブラジル・ウガンダ・ケニア・ソマリア・サントメ・プリンシペ・コンゴ共和国・DRC・インドネシア・ナウル・キリバス、そしてガボンです。そのうち、赤道そのものを国旗のデザインに直接組み込んでいると明確に言われているのは、ガボンが代表格です。
緯度0度を、デザインの真ん中に置く。地理的にめちゃくちゃ理にかなった発想です。
緑(北)と青(南)の意味
赤道を境界線として考えると、上の緑と下の青の配置にも意味が読み取れます。
緑(北):熱帯雨林の国
ガボンは国土の約85%が熱帯雨林に覆われた国です。アマゾンに次ぐ世界第2の熱帯雨林であるコンゴ盆地の熱帯雨林の一部を成しています。
木材は主要輸出品で、オクメ材などが知られます。国の13%が国立公園として保護されており、アフリカ・マルミミゾウ・ゴリラ・マンドリルなどの希少動物の生息地でもあります。
「緑=森」というのは、ガボンにとっては抽象的な象徴ではなく、国の85%を占める現実そのものです。
青(南):大西洋
ガボンの西側は南大西洋に面した海岸です。海岸線は約885kmあり、海底油田はガボン経済の主要収入源でGDPの約半分を占めています。漁業もさかんです。
赤道直下の温暖な海で、海産物と石油が国の経済を支えている、という地理がそのまま色になっています。
赤道を挟んで、森と海。国土の3つの基本要素を縦三色で表現したわけです。
1959年→1960年、フランス三色旗が消えた
ガボンの国旗には、独立直前のちょっと興味深い変化がありました。
1959年版:仏領時代
ガボンは1959年6月29日(自治政令第36-59号)に最初の国旗を採用しました。このときのデザインは、緑・黄・青の横三色(黄色の帯はやや細め)で、左上のカントンにフランス三色旗が入っていました。
つまり、自治を獲得したがまだ完全独立ではない、という状態を、フランス三色旗を左上に置くことで示していたわけです。
1960年8月9日:独立直前の修正
独立予定日(8月17日)の8日前にあたる1960年8月9日、デザインが修正されます。左上のフランス三色旗を削除し、黄色の帯を太くして3色とも均等幅にしました。
そして1960年8月17日、ガボンはフランスから独立します。新しいシンプルな緑黄青の三色旗が、独立国家の象徴として掲げられました。
独立の1週間前に、フランスの痕跡を消した。完全に独立する直前のタイミングで宗主国の色を旗から外す、という象徴的な動きです。旧仏領アフリカの多くの国が同様の変化を経ているなかでも、特に明快な例だと言えます。
「汎アフリカ色」を避けた選択
ガボン国旗のもうひとつの特徴は、汎アフリカ色(赤・黄・緑)を採用していないことです。
ガーナ・カメルーン・マリ・セネガルなど、独立後のアフリカ諸国の多くが、エチオピアにルーツを持つ「赤・黄・緑」の汎アフリカ色を国旗に採用しました。
しかしガボンは、赤の代わりに青を選びました。
理由は明確です。大西洋に面した海洋国家としてのアイデンティティを強調したかったこと、国土を貫く赤道を黄色で表すというデザインコンセプトを優先したこと、そして「アフリカの大地(赤)」ではなく「ガボンの地理(青=海)」を選んだことです。
汎アフリカの連帯より、ガボンの地理を優先する。そういうデザイン上の選択でした。同じ赤道直下の国でも、ウガンダ・エチオピアなどとは違うアプローチを取った、と言えます。
3:4の珍しい縦横比
ガボン国旗の縦横比は3:4です。これは、世界の国旗のなかでもけっこう珍しい比率です。
| 比率 | 国 |
|---|---|
| 1:1(正方形) | スイス、バチカン |
| 2:3 | 日本、フランス、ドイツなど多数 |
| 10:19 | アメリカ |
| 3:4 | ガボン、パプアニューギニア、サンマリノ |
| 11:28 | カタール(横長極端) |
3:4というのは「ほぼ正方形に近い長方形」で、テレビの古い4:3比とほぼ同じです。世界の国旗としては「ずんぐり」した印象になります。
なぜこの比率を選んだか、はっきりした記録はありませんが、シンプルな三色のシンメトリーを際立たせるためではないか、というのが一般的な解釈です。長い長方形だと、横に3色が引き伸ばされて各色のブロック感が薄れる。それを防ぐためのデザイン判断、ということです。
まとめ:地理がそのまま、旗になった
今回のガボン国旗のまとめです。
- 緑・黄・青の横三色(縦横比3:4)
- 緑は熱帯雨林(北の森)、黄は赤道そのものと太陽、青は南大西洋(南の海)を表す
- 赤道が国土を真ん中で横切るガボンの地理を、そのまま旗にした構造
- 1959年6月29日に最初の旗(仏三色旗付き)を採用した
- 1960年8月9日、独立8日前にフランス三色旗を削除し、黄色の帯を拡大した
- 1960年8月17日、フランスから独立した
- 汎アフリカ色(赤・黄・緑)を採用せず、青を選んだ稀有な独立アフリカ国家
- 縦横比3:4はパプアニューギニア・サンマリノと共有する珍しい比率(DRCも過去には3:4の時期があったが、現行は2:3)
国土を貫く赤道を、文字通り黄色い帯で旗の真ん中に置いた。ガボンの国旗は、地理がデザインのロジックを決めた、シンプルだけど発想がユニークな1枚です。