青地のなかに、白・赤・白の3本の帯。そして左側に10の黄色い星が円を描いて並んでいる。これがカーボベルデの国旗です。「島の数を、星の数で表す」という発想自体は珍しくないんですが、配置が「円」になっているのがカーボベルデならでは。10の島が手をつなぐような、ちょっと詩的なデザインです。今回はそんなカーボベルデ国旗の話。
まずは構成のおさらい
カーボベルデ国旗は、ちょっと変わった構造をしています。
- 背景:青
- 横の中央付近:白・赤・白の3本の不等幅の帯(赤い帯がいちばん太い)
- 左寄り、赤い帯の中央:10の黄色い五芒星が円を描いて並んでいる
10の星はそれぞれ先端が上を向くように配置されていて、輪のなかでとても整然としています。
色とシンボルの意味は、以下のとおりです。
- 青:大西洋と空
- 白(2本):平和、建国への決意
- 赤:建国の努力、進歩
- 黄色い10の星:カーボベルデの10の主要島
10の星は、10の島
カーボベルデは、大西洋上の島嶼国家です。西アフリカのセネガル沖、約500km沖合に浮かぶ10の島からなる共和国です。
10の島を、北のバルラヴェント(風上)諸島から南のソタヴェント(風下)諸島の順に並べると、次のようになります。
バルラヴェント諸島(風上)
- サント・アンタン
- サン・ヴィセンテ
- サンタ・ルジア(無人島)
- サン・ニコラウ
- サル(観光地として有名)
- ボア・ヴィスタ(観光地として有名)
ソタヴェント諸島(風下)
- マイオ
- サンティアゴ(首都プライアがある)
- フォゴ(活火山)
- ブラヴァ
この10が、そのまま国旗の星の数です。
「島の数=星の数」は他にも、コモロ(4島→4星)、サントメ・プリンシペ(2島→2星)などがありますが、カーボベルデのように円に並べて団結を表す例は珍しいものです。離れた10の島を、ひとつの輪が結んでいる。文字通り、デザインそのものが国の姿を表しているわけです。
ちなみに10島のうちサンタ・ルジアは無人島ですが、それでも数えられている、というのも国旗の細部です。
1975年、独立とともに別の旗だった
カーボベルデの現在の国旗は1992年に採用されたものですが、それ以前は全然違う旗を使っていました。1975-1992年の間の初代国旗、これがまた、興味深い背景を持っています。
カーボベルデは1975年7月5日にポルトガルから独立しました。ポルトガルの植民地として400年以上統治されていたため、独立は大きな出来事です。
そして独立を主導したのが、PAIGC(Partido Africano da Independência da Guiné e Cabo Verde、ギニア・ビサウとカーボベルデの独立アフリカ党)です。カーボベルデとギニア・ビサウの統一独立運動を進めていた政党でした。
当初は「カーボベルデとギニア・ビサウを1つの国に統一する」という構想もあり、両国はほぼ同じデザインの国旗(赤・緑・黄に黒星)を使っていました。ギニア・ビサウの旗と並べると、ほぼそっくりだったわけです。
しかし1980年、ギニア・ビサウで軍事クーデタが発生し、両国の関係が悪化します。統一構想は事実上消滅しました。それでも、カーボベルデ側は1992年まで、PAIGCの色を引き継いだ汎アフリカ色の旗を使い続けました。
1991年の民主化選挙で、旗が変わった
1990年代、世界中で冷戦終結後の民主化の波が起こります。カーボベルデもその例外ではなく、1991年に複数政党制の自由選挙が初めて実施されました。
結果は、長く一党独裁だった旧PAIGC系のPAICV党が敗北し、民主運動党(MpD)が政権を獲得します。
新政権は社会主義・汎アフリカ主義路線からの転換を打ち出し、国旗を含む国のシンボルを刷新することを決めました。そして1992年9月22日、現在の青地に10の星の旗が正式採用されたわけです。
新しい旗が伝えたかったメッセージは、過去のPAIGC路線(社会主義と汎アフリカ主義)との決別であり、ギニア・ビサウとの統一構想は終わったということ、そして西側民主主義と、海洋国家としてのアイデンティティへ向かうという宣言でした。
この変更は政治的に大きな意味を持ち、「アフリカで、国旗を完全に変えた数少ない例」として、いまも語られます。
赤・白・青は「ポルトガルとアメリカ」へのオマージュ?(諸説)
新国旗の青・白・赤の組み合わせには、政府公式の解釈とは別に、文化的な解釈・諸説もあります。
カーボベルデにとって、特別な関係を持つ国が2つあります。ひとつはポルトガルで、旧宗主国であり、いまも文化的・言語的に深い結びつきがあります。もうひとつはアメリカ合衆国で、ボストン・ロードアイランド周辺に大規模なカーボベルデ系移民コミュニティがあります。
公式には青は海と空、白は平和、赤は努力と進歩と定義されていますが、巷では「この2つの国の国旗(青・白・赤)を意識して選ばれた色ではないか」と語られることがあります(あくまで非公式な解釈・諸説です)。過去(ポルトガル)と現代(アメリカ)、両方とつながる海洋国家として歩んでいきますというメッセージとして読み解けば、しっくり来るという見方です。
ちなみに米国在住のカーボベルデ系の人口(約30万人)は、本国の人口の半数以上にあたります。ディアスポラがものすごく大きい国で、本国経済を支える送金がGDPの10%以上を占めることもあるほどです。国旗にアメリカへの目配せがあるのは、こういう関係性を反映しているわけです。
まとめ:10の島が、円を描いてひとつになっている
今回のカーボベルデ国旗のまとめです。
- 青地に白・赤・白の不等幅3本の横帯+10の黄色い五芒星が円を描いて配置
- 1992年9月22日採用、1975年独立以来2代目の国旗
- 10の星は、大西洋上のカーボベルデを構成する10の主要島
- 星の円形配置は、離れた島々のひとつの国としての団結
- 1975-1992年の初代国旗はPAIGC(ギニア・ビサウとカーボベルデの統一独立党)由来の汎アフリカ色だった
- 1980年ギニア・ビサウのクーデタで両国の統一構想が事実上消滅
- 1991年の民主選挙で民主運動党(MpD)が政権獲得、社会主義路線からの脱却を象徴する新国旗を制定
- 公式の色の意味は「青=海と空、白=平和、赤=努力と進歩」。「ポルトガルとアメリカへのオマージュ」は非公式の解釈・諸説として語られる
- 米国在住のカーボベルデ系人口は本国人口の半数以上、送金がGDPの主要部分
10の島を、1つの輪で結ぶ。カーボベルデの国旗は、海に散らばる国土を詩的なシンボルでひとつにまとめた、世界の旗のなかでも独特な1枚です。