赤と緑の横二色、中央に黄色い星。ブルキナファソの国旗です。汎アフリカ色(赤・黄・緑)を最もシンプルに表現した1枚です。1984年、トマ・サンカラ革命によって、国名そのものが「オートボルタ(上ボルタ)」から「ブルキナファソ(真摯な人々の国)」に変更され、国旗も同時に新しくなりました。世界の国旗のなかで稀な「革命と同時に国名と国旗を一新した国」の旗です。今回はそんなブルキナファソ国旗の話です。


まずは構成のおさらい

ブルキナファソ国旗の構成は、次のとおりです。

  • 横2本の帯(上から):赤・緑
  • 中央:黄色い5角星

色とシンボル(汎アフリカ色)は、以下のとおりです。

  • :1983年8月4日のトマ・サンカラ革命、ブルキナファソ建国の血
  • :農業・天然資源の豊かさ
  • 黄色い星:革命の指導の光、社会主義革命の星

3色2帯に1つの星。これが、汎アフリカ色の最もミニマルな表現です。


「ブルキナファソ=真摯な人々の国」

国名「ブルキナファソ」(Burkina Faso)は、ブルキナベ(ブルキナファソ国民)の2つの主要言語を合成したものです。

「Burkina Faso」の意味

「Burkina」はモシ語で「真摯な、誠実な、不正に屈しない」を、「Faso」はジュラ語で「父祖の地、祖国」を意味します。合わせて「Burkina Faso」は、「真摯な人々の祖国」「不正に屈しない人々の国」となります。

民族・言語の多様性を、国名で団結させる。これがサンカラの政治的メッセージでした。

「ブルキナベ」

ブルキナファソ国民の呼称は、ブルキナベ(Burkinabé / Burkinabè)です。「Burkina」にフラニ語の人称接尾辞「-bé」を加えたもので、「真摯な人々」を意味します。モシ・ジュラ・フラニの3言語を統合した造語です。

国名・国民の呼称・国旗、そのすべてが3言語の融合で表現されるというのは、世界でも稀な多言語統合の事例です。


1984年8月4日 ── 革命の日に国名と国旗を変更

ブルキナファソ国旗の誕生は、1984年8月4日、トマ・サンカラ革命1周年の日でした。

1983年8月4日、革命

1983年8月4日、トマ・サンカラ(Thomas Sankara、1949-1987)がクーデターで政権を獲得します。当時33歳の若い軍人で、「アフリカのチェ・ゲバラ」として知られました。その思想は、マルクス主義と汎アフリカ主義、そして革命思想を結びつけたものでした。

1984年8月4日、国名・国旗を変更

そして革命1周年の1984年8月4日、国名が「オートボルタ(上ボルタ)」から「ブルキナファソ」に変更され、国旗も同時に新調されました。

国名と国旗を、同じ日に同時に変える。これは世界史でも比較的稀ですが、いくつかの先例があるパターンです(ザイール→コンゴ民主共和国、リビアが2011年に大リビア・アラブ・社会主義人民ジャマーヒリヤ国から「リビア」へ移行し緑単色旗から三色旗へ変更、カンボジアの民主カンプチア→カンプチア人民共和国など)。サンカラの場合は、植民地時代の名残を完全に払拭し、革命の理念を明確に込めたドラスティックな刷新でした。

旧オートボルタの国旗

旧オートボルタ(Upper Volta)の国旗は、黒・白・赤の横三色でした。ボルタ川の3つの支流(黒ボルタ川・白ボルタ川・赤ボルタ川)を象徴し、1960年のフランスからの独立時に制定されたものです。

そして「フランス植民地時代の遺産+ボルタ川の地理」から、「革命とアフリカの団結」へと旗は変わりました。植民地的な地理シンボルが政治的な革命シンボルへ、黒白赤という独自色が汎アフリカ色(赤緑+黄星)へと転換したのです。

過去の植民地遺産を完全に脱却し、汎アフリカ主義のシンボルを採用する。これがサンカラの設計思想でした。


トマ・サンカラ ── 「アフリカのチェ・ゲバラ」

ブルキナファソ国旗の精神的指導者が、トマ・サンカラ(Thomas Sankara、1949-1987)です。

1949-1987年、わずか37年の生涯

サンカラの経歴を見ていきます。1949年12月21日にオートボルタで生まれ、軍人として教育を受けました。1981年から軍政府の閣僚を務め、1983年8月4日には33歳でクーデターを成功させて首相に就任します。そして1984年から、実質的な大統領となりました。

サンカラの革命

4年間(1983-1987)の在任中、サンカラは極めて急進的な改革を進めました。国名・国旗・国歌・国是を変更し(国是は「祖国かさもなければ死を、我々は勝利する」)、封建的な土地所有を解体する大規模な土地改革を行いました。ワクチン接種運動では200万人以上の子供に接種し、女性の地位向上のために閣僚へ女性を多数登用し、一夫多妻制に反対し、女性割礼を禁止しました。食料自給を目指して輸入食品を禁止し、反汚職の姿勢から自分の給料を最低水準に抑え、政府の車を売却しました。

アフリカで最も革新的な指導者のひとりとして、世界中の左翼・反植民地主義者から尊敬されています。

1987年10月15日、暗殺

しかし1987年10月15日、サンカラはクーデターで暗殺されます。暗殺の指揮者は、サンカラの親友で後の大統領となるブレーズ・コンパオレでした。サンカラはわずか37歳で死去します。その背景には、フランス・コートジボワール・西側諸国の関与説もありますが、諸説あります。

「マンデラ以来の英雄」

現代、サンカラはアフリカで再評価されています。2020年代には各国で記念碑や像が建設され、ブルキナファソ国営の歴史教科書でも英雄として復活しました。南アフリカ・ガーナ・ナイジェリアなどでも、サンカラを記念する動きがあります。

国旗の赤が表すサンカラ革命の血というシンボルは、世界中のアフリカ系の人々にとって意味を持ち続けているのです。


汎アフリカ色 ── エチオピア起源

ブルキナファソ国旗の赤・黄・緑は、汎アフリカ色です。

エチオピア国旗からの継承

ガーナ記事やトーゴ記事でも触れたとおり、エチオピア国旗(緑・黄・赤)が、汎アフリカ色の起源です。エチオピアはアフリカで唯一植民地化されなかった国であり、アフリカ独立の象徴でした。

そして1957年のガーナ独立を機に、汎アフリカ色が広く採用されていきます。ガーナ・マリ・ギニア・セネガル・トーゴ・カメルーンなど多数の国が採り入れ、ブルキナファソも1984年にこの系統に加わりました。

「最もシンプルな汎アフリカ色国旗」

ブルキナファソ国旗は、汎アフリカ色のなかで最もシンプルです。3色を使いながらも帯は2帯のみ(赤と緑、間に星)で、黄色は星だけに使われています。赤は革命、緑は大地、黄は指導の光を表します。

ミニマルな汎アフリカ旗として、ガーナ(3帯+黒星)やセネガル(3帯+緑星)よりさらに単純な構成です。


ブルキナファソという国

ブルキナファソの基本情報です。

  • 正式名:ブルキナファソ(「共和国」などの政体名を含まない数少ない国名。他にはツバル・ソロモン諸島・リビア(State of Libya)・アイルランドなどがあります)
  • 首都:ワガドゥグー(Ouagadougou)
  • 面積:約27.4万km²
  • 人口:約2,300万人
  • 公用語:フランス語(実質的)、モシ語・フラニ語・ジュラ語などの民族語
  • 宗教:イスラム教(約60%)、キリスト教(約23%)、伝統宗教(約15%)

「内陸国」

ブルキナファソは、西アフリカの内陸国です。海に面しておらず、南はコートジボワール・ガーナ・トーゴ・ベナン、北はニジェール・マリと接しています。国土の大半はサバンナです。

「世界最貧国のひとつ」

ブルキナファソは、人間開発指数で世界下位に位置します。HDIは193カ国中で世界185位前後、国民1人当たりGDPは約900ドル、平均寿命は約63歳です。

国旗の緑が表す大地の豊かさというシンボルとは裏腹に、現実には貧困と気候変動の課題を抱えている、というのが現代ブルキナファソです。

2022年、軍事クーデター

最近のブルキナファソは、西アフリカのクーデター連鎖の一部にあります。2022年1月に軍事クーデターが起こり、2022年9月には再度のクーデターでイブラヒム・トラオレ大尉(当時34歳)が政権を獲得しました。トラオレは「新世代のサンカラ」として注目されています。フランスとの関係を断絶してロシア・ワグネルとの関係を構築し、マリ・ニジェールとともにサヘル諸国同盟(AES)を結成しました。

国旗のシンボルが表す革命の理念は、現代も繰り返し試されている、というのが現代ブルキナファソです。ただし諸説あり、評価は政治的立場により大きく異なります。


ちなみに:「ワガドゥグー」という名前

首都ワガドゥグー(Ouagadougou)は、世界でもっとも発音が難しい首都名のひとつです。

「Oua-ga-dou-gou」

フランス語式の表記は「Ouagadougou」で、音声は「ワ・ガ・ドゥ・グー」または「ウォ・ガ・ドゥ・グー」と読みます。モシ語では「Wogdgo(ウォグドゴ)」、その意味は「戦士たちが敬意を払う場所」とされます(諸説あり)。

世界で最も覚えにくい首都名として、地理ファンに有名です。

FESPACO映画祭

ワガドゥグーは、FESPACO(汎アフリカ映画テレビ祭)の開催地です。アフリカ最大の映画祭で、2年に1度開催され、「アフリカのカンヌ」として知られています。

国旗の黄色い星はアフリカ映画の輝きを表す、という解釈も可能です。ブルキナファソは、政治の混乱の中でも、文化的に重要な役割を果たしています。


まとめ:革命と汎アフリカ色、真摯な人々の国

今回のブルキナファソ国旗のまとめです。

  • 赤(上)と緑(下)の横二色+中央の黄色い5角星
  • 1984年8月4日、トマ・サンカラ革命1周年に正式採択
  • 同日、国名も「オートボルタ(上ボルタ)」から「ブルキナファソ」に変更
  • 「Burkina」=モシ語で「真摯な」、「Faso」=ジュラ語で「父祖の地」
  • 「Burkina Faso」=「真摯な人々の祖国」「不正に屈しない人々の国」
  • 赤=1983年8月4日のサンカラ革命の血、緑=農業と自然資源、黄星=革命の指導の光
  • 旧国旗は黒・白・赤の横三色(オートボルタ時代、1960年制定、ボルタ川3支流の象徴)
  • トマ・サンカラ(1949-1987)は「アフリカのチェ・ゲバラ」、わずか33-37歳で在任
  • 大規模な土地改革、ワクチン接種、女性地位向上、反汚職を推進
  • 1987年10月15日、サンカラはクーデターで暗殺(37歳)、背景は諸説あり
  • 汎アフリカ色(赤・黄・緑)のなかで最もシンプルな構成
  • 内陸国、人口約2,300万、首都ワガドゥグー
  • 人間開発指数で世界下位、最貧国のひとつ
  • 2022年9月クーデターでイブラヒム・トラオレ大尉が政権獲得(「新世代のサンカラ」)
  • マリ・ニジェールとともにサヘル諸国同盟(AES)結成、フランスとの関係断絶
  • 首都ワガドゥグーは汎アフリカ映画祭FESPACOの開催地

真摯な人々が、革命の星のもとに。ブルキナファソの国旗は、サンカラの革命理念と汎アフリカ主義を、最もシンプルな3色2帯1星に込めた、20世紀末アフリカ革命の象徴です。