白と黒の9本の横帯、左上にはオコジョの毛皮を表す黒い斑が並ぶ白い区画。ブルターニュの旗、グウェン・ハ・デュです。フランス北西部、ケルトの文化を受け継ぐ地域の旗で、実は星条旗にヒントを得てデザインされた1枚。アイルランド・スコットランド・ウェールズ・マン島と並ぶ「ケルトの6民族」の1つでもあります。今回はそんなブルターニュの旗の話です。


まずは構成のおさらい

ブルターニュ旗(グウェン・ハ・デュ)の構成は、次のとおりです。

  • 横9本の帯:黒5本と白4本が交互に並ぶ
  • 左上の区画:白地に黒いオコジョの斑(アーミン)

色とシンボルの意味は、以下のとおりです。

  • グウェン・ハ・デュ:ブルトン語で「白と黒」という意味
  • 9本の帯:ブルターニュの伝統的な9つの司教区を表す
  • オコジョの斑:ブルターニュ公国の紋章に由来する

白黒の帯と、オコジョの黒い斑を組み合わせた、ケルトの地のシンボルです。


「星条旗がヒントだった」

ブルターニュ旗の、意外な起源を見ていきます。

1923年、モルヴァン・マルシャルがデザイン

この旗は1923年、モルヴァン・マルシャルによってデザインされました。彼はアメリカの星条旗を、自由の象徴として参考にしたと言われています。そして1925年、パリの現代装飾美術・産業美術国際博覧会で広く知られるようになりました。

星条旗との対応

星条旗(アメリカ国旗)と比べてみると、帯模様と左上の区画という構成が同じであることがわかります。さらに、星条旗の星にあたる部分が、ブルターニュではオコジョの斑になっています。

自由の国の旗にヒントを得て、ケルトの地の旗が生まれた。20世紀ならではの物語です。


「9本の帯」 ── 9つの司教区

ブルターニュ旗の、帯の意味を見ていきます。

黒5本・白4本

9本の帯は、ブルターニュの伝統的な9つの司教区を表しています。黒い5本はフランス語(ガロ語)圏の司教区で、ドル・ナント・レンヌ・サン=マロ・サン=ブリユーにあたります。白い4本はブルトン語圏の司教区で、トレギエ・レオン・コルヌアイユ・ヴァンヌを表します。

帯の白黒が、ブルトン語圏とフランス語圏という地域の構成を反映したデザインです。


「オコジョの斑」 ── ブルターニュ公国の紋章

ブルターニュ旗の、もう1つのシンボルを見ていきます。

アーミン(オコジョ)

左上の白地に並ぶ黒い斑は、アーミン(オコジョの毛皮)と呼ばれます。これはブルターニュ公国の紋章に由来し、白い冬毛のオコジョの毛皮を表す紋章のパターンです。

斑の数は決まっていない

面白いことに、斑の数には決まりがありません。デザイナーのマルシャルは斑の数に意味を与えず、初期のデザインでも数は一定ではありませんでした。一方で、一部のブルターニュ独立派にとっては、11個の斑が標語「Breizh dieub(自由なブルターニュ)」の11文字を表すとも言われています(諸説あり)。


「ケルトの6民族」

ブルターニュの、もう1つの顔を見ていきます。

ブルトン語とケルト文化

ブルターニュは、ケルトの地です。ブルトン語は、ウェールズ語などと同じケルト系の言語にあたります。そしてブルターニュは、アイルランド・スコットランド・ウェールズ・コーンウォール・マン島と並ぶ「ケルトの6民族」の1つに数えられています。

フランスにありながら、ケルトの文化と言語を受け継ぐ地域。それがブルターニュの個性です。ウェールズやマン島の記事ともつながる、ケルトの世界です。


ブルターニュという地域

ブルターニュの基本情報です。

  • 正式名:ブルターニュ地域圏(Bretagne/Breizh)
  • 州都:レンヌ(Rennes)
  • 面積:約2.7万km²
  • 人口:約330万人
  • 公用語:フランス語(ブルトン語・ガロ語も使われます)
  • 法的地位:フランスの地域圏

「独立したブルターニュ公国だった」

ブルターニュは、かつて長く独立したブルターニュ公国でした。フランスに正式に統合されたのは1532年のことです。ブルターニュ女公アンヌ・ド・ブルターニュが、その歴史のなかでよく知られています。

「巨石とケルトの文化」

ブルターニュには、先史時代のメンヒルで知られるカルナックの巨石群があります。食ではクレープやガレット、シードルが親しまれ、ケルト音楽の祭り(フェスティバル・インテルセルティック)も開かれています。


まとめ:白黒の9本帯とオコジョの斑、ブルターニュ

今回のブルターニュ旗のまとめです。

  • 白と黒の9本の横帯(黒5・白4)と、左上の白地にオコジョの黒い斑(アーミン)
  • 「グウェン・ハ・デュ」はブルトン語で「白と黒」
  • 1923年、モルヴァン・マルシャルがデザインし、自由の象徴として星条旗を参考にした
  • 帯と左上の区画という構成が星条旗と同じ(星はオコジョの斑にあたる)
  • 1925年、パリの博覧会で広く知られた
  • 9本の帯は伝統的な9つの司教区、黒5本はフランス語(ガロ語)圏、白4本はブルトン語圏
  • オコジョの斑(アーミン)はブルターニュ公国の紋章に由来
  • 斑の数は決まっておらず、独立派には11個が「Breizh dieub(自由なブルターニュ)」の11文字とも(諸説あり)
  • ブルトン語はウェールズ語と同じケルト系、アイルランド・スコットランド・ウェールズ・コーンウォール・マン島と並ぶ「ケルトの6民族」
  • かつて独立したブルターニュ公国で、1532年にフランスに統合
  • カルナックの巨石群、クレープ・ガレット・シードル、ケルト音楽の祭り
  • 面積約2.7万km²、人口約330万人、州都レンヌ

白黒の9本帯と、オコジョの斑。ブルターニュの旗は、星条旗にヒントを得て生まれた、ケルトの地のアイデンティティを込めた1枚です。