水色の地、中央に白い縁取りの黒い横帯。ボツワナの国旗は、アフリカ南部の内陸国の旗です。水色は雨と空、黒と白はシマウマ(ボツワナ国獣)の縞模様、そして黒人と白人の調和を表すという、アフリカ大陸では稀な「非汎アフリカ色」のデザインです。そしてボツワナは、アフリカで最も民主的かつ豊かな国のひとつでもあります。今回はそんなボツワナ国旗の話です。
まずは構成のおさらい
ボツワナ国旗の構成は、次のとおりです。
- 背景:水色(スカイブルー)
- 中央の横帯:黒(白い細い縁取り付き)
- 比率:2:3
色とシンボルは、以下のとおりです。
- 水色:空、雨、水。国是「Pula(雨・水・生命)」を反映
- 黒:アフリカ系国民
- 白(縁取り):白人系国民(ヨーロッパ系)、人種間の平和
- 黒+白の組み合わせ:シマウマ。国獣の縞模様
乾燥地帯の貴重な雨、シマウマの縞、そして人種間の調和という、極めて独特のアフリカ国旗です。
「水色=雨」 ── 乾燥国家の願い
ボツワナ国旗の最も特徴的な意味が、Pula です。
「Pula」 ── 国是にして通貨
Pula とは、ツワナ語で「雨、水、生命」を意味します。ボツワナの国是であり、通貨単位(ボツワナ・プラ、BWP)でもあり、さらに「ありがとう」「祝福を」などの挨拶にも使われる言葉です。
なぜ「雨」が国是か
これにはボツワナの地理的特徴が関係しています。国土の約70%がカラハリ砂漠で、南部アフリカでも極めて乾燥した気候のため、雨は生命そのものなのです。
ジャマイカやキリバスの海、ナミビアの砂漠と並ぶ、自然条件が国家アイデンティティの中核になっている例といえます。雨が降ること、すなわち幸運を「Pula」と呼び、国民の挨拶にも雨が登場するのです。
国旗の水色は、青空ではなく雨を願う色だ、という乾燥地帯ならではの独特な解釈です。
「黒と白」 ── シマウマと人種調和
ボツワナ国旗の中央にあるのが、黒い帯と白い縁取りです。
シマウマ(国獣)
シマウマ(Equus zebra、Equus quagga)は、ボツワナの国獣です。黒と白の縞模様を持ち、サバンナに生息する、国民的なシンボルです。
国旗中央の黒と白がシマウマの縞を表すというのは、アフリカでは稀な動物シンボルの間接表現です。ザンビアのアフリカウオワシ、ウガンダのアフリカハクトウヅルなどと並ぶ、動物を象徴に組み込んだアフリカ国家といえます。
「人種間の調和」
そして黒と白の組み合わせは、人種間の平和も表します。黒はアフリカ系(人口の約95%)、白はヨーロッパ系(人口の約3%)を指し、両者が平和に共存することを意味します。
南アフリカのアパルトヘイト(1948-1994)と対照的な姿勢というのが、独立時のボツワナの選択でした。人種ではなく国民として団結する、というメッセージです。
「南アフリカと差別化」
1966年の独立時、ボツワナは「南アフリカと違う国旗」を意識しました。隣の南アフリカはアパルトヘイト政策のさなかにあり、多くのアフリカ諸国は汎アフリカ色(赤・黄・緑)を採用していました。そうしたなか、ボツワナは汎アフリカ色を用いず、独自の水色+黒白を選んだのです。
汎アフリカ色を採用しない数少ないアフリカ国家として、ボツワナ・ナミビア・南アフリカなど、南部アフリカに共通する独立性がうかがえます。
1966年9月30日 ── 独立
ボツワナ国旗は、独立とともに正式採択されました。
ベチュアナランド保護領
ボツワナは、1885年から1966年まで、イギリスのベチュアナランド保護領でした。セツワナ族(ツワナ族)の領土であり、南アフリカに併合される危険を避けるため、自らイギリスの保護領となった経緯があります。その意味で、イギリス植民地ではなく、保護領という位置づけでした。
1966年9月30日、独立
そして1966年9月30日午前0時、独立を迎えます。ベチュアナランドはボツワナ共和国となり、新国旗が初めて掲揚されました。初代大統領はセレツェ・カーマ(Seretse Khama、1921-1980)です。
セレツェ・カーマ
セレツェ・カーマは、ボツワナ建国の父です。ツワナ族の伝統的な王族の出身で、オックスフォード大学に留学しました。当時は人種隔離の時代でしたが、イギリス人の白人女性ルース・ウィリアムズと結婚し、大きな議論を呼びます。独立後は初代大統領となり、ボツワナの民主主義の基盤を築きました。
ボツワナという国
ボツワナの基本情報です。
- 正式名:ボツワナ共和国(Republic of Botswana)
- 首都:ハボロネ(Gaborone)
- 面積:約58.2万km²(フランスとほぼ同じ)
- 人口:約260万人
- 公用語:英語、ツワナ語
- 宗教:キリスト教(約79%)
「アフリカで最も民主的な国」
ボツワナは、その民主主義が世界的に評価されています。独立以来、軍事クーデターは一度もなく、これはアフリカでは稀なことです。複数政党制と自由選挙が確立され、民主主義指数はアフリカで上位、腐敗認識指数でもアフリカで上位(最も腐敗が少ない部類)に位置します。
国旗の白が表す平和、人種間の調和というシンボルが、現実の政治制度に反映された稀な例です。
「世界最大級のダイヤモンド産出国」
ボツワナは、世界トップクラスのダイヤモンド産出国です。デビアス社との合弁会社デブスワナが世界最大級のダイヤモンド採掘を行い、ジュワネング鉱山は世界で最も価値の高いダイヤモンド鉱山とされます。GDPの約20-25%をダイヤモンドが占めます。そしてボツワナは、収益を教育・医療・インフラに投資することで「資源の呪い」を回避した稀な国でもあります。
国旗の黒い帯はダイヤモンドの原石が眠る大地だ、という解釈もあります。
「オカバンゴ・デルタ」
ボツワナには、世界遺産級の自然であるオカバンゴ・デルタがあります。カラハリ砂漠の中の内陸三角州で、約1万5,000km²の湿地帯が広がります。ライオン・ゾウ・キリン・カバ・多種の野鳥など、アフリカ最大級の野生動物の生息地で、2014年にユネスコ世界遺産に登録されました。
砂漠の真ん中に川がもたらすオアシスというのが、ボツワナの自然の不思議です。「Pula(雨)」が、文字通り命を生む地です。
「ゾウ大国」
ボツワナは、世界で最も多くのアフリカゾウが生息する国です。約13万頭のゾウがおり、これは世界の約3分の1にあたります。チョベ国立公園はゾウの最大の生息地で、「ゾウの楽園」とも呼ばれます。
しかし一方で、増えすぎたゾウとの共存問題も抱えています。農作物の被害が出ており、2019年にはゾウ狩猟の制限が一部解除されました(諸説あり)。
国旗の黒は、アフリカの大地、ゾウが歩く大地を表すシンボルでもあります。
ちなみに:「Tswana」と「Botswana」
国名「ボツワナ」(Botswana)は、ツワナ語に由来します。
言語学的構造
「Bo-」はツワナ語の接頭辞で、「〜の国、〜の地域」を意味します。「Tswana」はツワナ族のことです。つまり「Botswana」は「ツワナ族の国」を意味します。
関連用語
関連する用語として、「Motswana」(単数)は1人のツワナ族/ボツワナ人、「Batswana」(複数)はツワナ族/ボツワナ人(複数)、「Setswana」はツワナ語を指します。
マラウイ・ザンビア・マリなど、民族名を国名にしたアフリカ国家の典型例です。
まとめ:雨と、シマウマと、民主主義
今回のボツワナ国旗のまとめです。
- 水色(スカイブルー)の地+中央の黒い横帯(白い細い縁取り)
- 1966年9月30日午前0時、独立と同時に正式採択
- 水色=空・雨・水(国是「Pula」=雨・水・生命)
- 黒=アフリカ系国民、白=白人系国民、黒+白=シマウマ(国獣)の縞模様
- 国土の約70%がカラハリ砂漠、雨が国家の命
- 通貨単位も「プラ(Pula)」、挨拶でも「Pula」と言う
- 1885-1966年イギリス保護領「ベチュアナランド」
- 初代大統領セレツェ・カーマ(オックスフォード留学、白人女性と結婚した時代の象徴)
- 汎アフリカ色を採用しない数少ないアフリカ国家
- 南アフリカのアパルトヘイトと意図的に差別化
- 独立以来軍事クーデターなし、アフリカで最も民主的な国
- 民主主義指数・腐敗認識指数でアフリカ上位
- 世界トップクラスのダイヤモンド産出国(デブスワナ、ジュワネング鉱山)
- 「資源の呪い」を回避、教育・医療・インフラに投資
- オカバンゴ・デルタ(ユネスコ世界遺産、砂漠中のオアシス)
- 世界で最も多くのアフリカゾウが生息(約13万頭、世界の3分の1)
- 国名「ボツワナ」=ツワナ族の国(ツワナ語)
雨を願う水色と、シマウマの縞を組み合わせたボツワナの国旗は、乾燥した大地への祈りと多民族の調和を独特の3要素に込めた、アフリカで最も民主的な国家のシンボルです。