赤地に、左上のユニオン・ジャック、右側に赤いライオンが難破船の盾を抱える紋章。バミューダの旗、北大西洋のイギリス海外領土の旗です。1609年のシー・ヴェンチャー号の難破、それがバミューダ植民の始まりでした。そしてシェイクスピア『テンペスト』のモデルになった島でもあり、イギリス海外領土では珍しく赤エンサインを使う1枚でもあります。今回はそんなバミューダ旗の話です。
まずは構成のおさらい
バミューダ旗の構成は、次のとおりです。
- 背景:赤(レッド・エンサイン)。珍しい
- 左上のカントン:ユニオン・ジャック
- 右側(フライ側):バミューダ紋章
紋章の構成は、以下のとおりです。
- 白地に緑の小山
- 赤いライオン:座って正面を向く、グレートブリテンの象徴
- ライオンが抱える青い盾:シー・ヴェンチャー号の難破の絵
- 国是:「Quo Fata Ferunt(運命が我らを運ぶところへ)」
色とシンボルの意味は、次のとおりです。
- 赤(レッド・エンサイン):イギリスとの繋がり
- 赤いライオン:グレートブリテン
- 難破船の盾:1609年シー・ヴェンチャー号の難破、すなわちバミューダ植民の始まり
英連邦の旗(ただし赤エンサイン)に、難破船の紋章を組み合わせた、珍しい1枚です。
「赤エンサイン」 ── 珍しいイギリス海外領土旗
バミューダ旗の、世界的に独特な特徴を見ていきます。
多くは青エンサイン
イギリス海外領土の旗は、通常は青エンサイン(ブルー・エンサイン)です。アンギラ・ケイマン諸島・タークス・カイコス諸島・フォークランド諸島など、ほぼ全てが青地を使っています。
しかしバミューダは赤
そして、バミューダは赤エンサイン(レッド・エンサイン)を使います。イギリス海外領土で唯一、政府旗に赤エンサインを使う領土です(ジブラルタルは紋章旗で別系統)。赤地のバミューダ旗、というわけです。
赤エンサインは本来、イギリスの商船旗です。それを政府旗として使う、という珍しさがあります。
1609年シー・ヴェンチャー号 ── 難破が植民の始まり
バミューダ旗の中心にある、1609年の難破を見ていきます。
シー・ヴェンチャー号
シー・ヴェンチャー号(Sea Venture)は、1609年6月2日、イングランドのプリマスを出航しました。7隻の船団の旗艦で、目的地はジェームズタウン(バージニア植民地)でした。
1609年7月、ハリケーンで難破
1609年7月24日、船はハリケーンに遭遇します。船が浸水するなか、提督ジョージ・サマーズがバミューダ東部のサンゴ礁に船を乗り上げさせ、150人と1匹の犬が無事に上陸しました。
バミューダ植民の始まり
そして、この難破がバミューダ植民の始まりとなりました。生存者がバミューダに上陸し、難破がきっかけでイギリスがバミューダを植民地化していったのです。国旗の紋章は、この難破を描いたものです。
国旗に、植民の始まりとなった難破船が描かれている。世界の旗のなかでも珍しい「始まりの物語」です。
シェイクスピア『テンペスト』
そして、この難破はシェイクスピアにも影響を与えました。シー・ヴェンチャー号の難破の話がロンドンに伝わり、ウィリアム・シェイクスピアが戯曲『テンペスト(あらし)』(1611)のモデルにしたと言われています(諸説あり)。嵐で島に流れ着く物語です。
国旗の難破船が、シェイクスピアの名作の起源になった。文学的な繋がりです。
1910年10月4日 ── 紋章入りの旗
バミューダ旗の制定を見ていきます。
1624年から使われた紋章
バミューダ紋章は、1624年から使われています。ジョン・スミスの『バージニア総史』(1624)の表紙に登場しており、400年の歴史を持つ紋章です。
1910年10月4日、正式制定
そして1910年10月4日、王室令で紋章が正式に制定され、赤エンサインに追加されました。以後、現代まで使われています。
バミューダという領土
バミューダの基本情報です。
- 正式名:バミューダ(Bermuda)
- 首都:ハミルトン(Hamilton)
- 面積:約54km²
- 人口:約6.4万人
- 公用語:英語
- 法的地位:イギリスの海外領土(最古のイギリス海外領土)
「最古のイギリス海外領土」
バミューダは、イギリスの最古の海外領土です。1609年の難破から植民が始まり、1612年に正式に植民地化されました。400年以上のイギリス領ということになります。
「バミューダ・トライアングル」
バミューダには、世界的に有名な伝説があります。バミューダ・トライアングルです。バミューダ・フロリダ・プエルトリコを結ぶ三角形の海域で、「船や飛行機が消える」という伝説があり、科学的根拠は薄いものの、世界的に有名です。
「バミューダ・ショーツ」
そして、意外な世界的貢献もあります。バミューダ・ショーツです。バミューダ発祥の半ズボンで、ビジネスシーンでも着用される正装でもあります。島の名前が、世界のファッションになったのです。
「タックスヘイブン」
バミューダは、オフショア金融・保険の中心です。無税の制度を持ち、世界の再保険の中心地とされ、GDPの大半を金融・保険業が占めています。
まとめ:1609年の難破、ライオンの盾
今回のバミューダ旗のまとめです。
- 赤地(レッド・エンサイン)に、左上のユニオン・ジャックと右側のバミューダ紋章
- イギリス海外領土で珍しく赤エンサインを使う(多くは青エンサイン)
- 紋章は白地に緑の小山と、赤いライオン(グレートブリテン)、ライオンが抱える青い盾(シー・ヴェンチャー号の難破の絵)
- 国是「Quo Fata Ferunt(運命が我らを運ぶところへ)」
- 1609年6月、シー・ヴェンチャー号がプリマスを出航、ジェームズタウンへ向かう
- 1609年7月24日、ハリケーンでバミューダに難破、150人と犬1匹が上陸
- この難破がバミューダ植民の始まり
- シェイクスピア『テンペスト』(1611)のモデルになった(諸説あり)
- 紋章は1624年から使用(ジョン・スミス『バージニア総史』表紙)
- 1910年10月4日、王室令で紋章を赤エンサインに追加
- イギリス最古の海外領土(1612年に正式植民地化、400年以上)
- バミューダ・トライアングル(船や飛行機が消える伝説)
- バミューダ・ショーツの発祥地
- タックスヘイブン、世界の再保険の中心地、面積約54km²、人口約6.4万人
1609年の難破が、植民地の始まりとなった。バミューダの旗は、1隻の難破船から始まった400年のイギリス領の歴史を、ライオンの抱える盾に込めた1枚です。