青地に、左上のユニオン・ジャック、右側に緑の山と海鳥の盾、それを支える2頭のウミガメ。アセンション島の旗は、南大西洋の火山島であるイギリス海外領土の旗です。人が植えてつくった「人工の森」がある島であり、そしてブラジルから泳いでくるアオウミガメの一大繁殖地でもあります。今回はそんなアセンション島旗の話です。
まずは構成のおさらい
アセンション島旗の構成は、次のとおりです。
- 背景:青(ブルー・エンサイン)
- 左上のカントン:ユニオン・ジャック
- 右側(フライ側):アセンション島紋章
紋章の構成は、以下のとおりです。
- 盾:グリーンマウンテン(緑の山)と3羽のワイドアウェイク鳥(セグロアジサシ)
- 支え手:2頭のアオウミガメ
色とシンボルの意味は、次のとおりです。
- 緑の山:島を象徴する火山の山
- ワイドアウェイク鳥:島に大群で営巣する海鳥
- 2頭のアオウミガメ:大西洋有数のアオウミガメの繁殖地
緑の山とウミガメと海鳥が描かれた、火山島の自然を込めた1枚です。
「アオウミガメ」 ── ブラジルから泳いでくる
アセンション島旗の、支え手のシンボルを見ていきます。
大西洋有数の繁殖地
盾を支える2頭のアオウミガメ(Chelonia mydas)。アセンション島は、大西洋で最も重要なアオウミガメの繁殖地の1つです。
2,000km以上の旅
そして、驚きの回遊があります。アオウミガメは産卵のため、ブラジル沖から2,000km以上も泳いでくるのです。なぜこの小さな島に戻ってこられるのか、そのナビゲーションは謎とされています。
国旗のウミガメが、はるばる大西洋を渡ってくるという、自然のロマンです。
「人が植えてつくった森」 ── グリーンマウンテン
アセンション島の、世界でも珍しい話です。
もとは不毛の火山島
盾に描かれたグリーンマウンテンは、もともとは草木のない不毛の火山島でした。
ダーウィンとフッカーの実験
そして19世紀、壮大な試みが行われます。チャールズ・ダーウィンや植物学者ジョセフ・フッカーの発想で、意図的に多くの木が植えられました。こうして不毛の山が、人工的に雲霧林(クラウドフォレスト)へと作り変えられたのです。
人間が一から森をつくった、地球規模の実験。これがグリーンマウンテンの名の由来であり、国旗の「緑の山」は、人がつくった森でもあります。
「ワイドアウェイク」 ── 眠らせない鳥
アセンション島の海鳥を見ていきます。
セグロアジサシの大群
紋章のワイドアウェイク鳥(セグロアジサシ)は、島に大群で営巣する海鳥です。鳴き声がうるさくて眠れない(wide awake)ことから、「ワイドアウェイク」と呼ばれています。
飛行場の名前にも
そして、この鳥の名は島のワイドアウェイク飛行場にもつけられています。
アセンション島という領土
アセンション島の基本情報です。
- 正式名:アセンション島(Ascension Island)。セントヘレナ・アセンション・トリスタンダクーニャの一部
- 首都:ジョージタウン(Georgetown)
- 面積:約88km²
- 人口:約800人(定住者なし、軍・職員など)
- 公用語:英語
- 法的地位:イギリスの海外領土
「セントヘレナと同じ領土」
アセンション島は、セントヘレナと同じ領土に属します。セントヘレナ・アセンション・トリスタンダクーニャの一部であり、ナポレオンの島セントヘレナの北西にあります。
「昇天祭の日に発見」
島の名「アセンション(昇天)」は、キリスト教の祝日に由来します。1501年、ポルトガル人が無人島を発見し、それがキリストの昇天祭(Ascension Day)の日だったことから命名されました。国旗も2013年5月11日の昇天祭に初掲揚されています。
「軍事・通信の要衝」
アセンション島は、戦略的にも重要な役割を担ってきました。イギリス・アメリカの軍事基地が置かれ、重要な通信・追跡基地となっています。フォークランド紛争では中継基地として重要な役割を果たし、アポロ計画の追跡やGPSの地上局も置かれました。
まとめ:ウミガメと緑の山、人工の森の島
今回のアセンション島旗のまとめです。
- 青地(ブルー・エンサイン)に左上のユニオン・ジャックと右側のアセンション島紋章
- 紋章はグリーンマウンテン(緑の山)と3羽のワイドアウェイク鳥(セグロアジサシ)、支え手に2頭のアオウミガメ
- 緑の山は島を象徴する火山、海鳥は大群で営巣、ウミガメは大西洋有数の繁殖地を表す
- アオウミガメは産卵のためブラジル沖から2,000km以上も泳いでくる
- グリーンマウンテンはもと不毛の火山島で、19世紀にダーウィンやフッカーの発想で木が植えられ人工の雲霧林になった
- ワイドアウェイク鳥は鳴き声で眠れない(wide awake)ことが名の由来で、飛行場の名にもなった
- 紋章は2012年5月に承認、旗は2013年5月11日の昇天祭に初掲揚
- セントヘレナ・アセンション・トリスタンダクーニャの一部
- 1501年にポルトガル人が昇天祭の日に無人島を発見し、命名した
- イギリス・アメリカの軍事・通信・追跡の要衝で、フォークランド紛争では中継基地となった
- 定住者なし、人口約800人、面積約88km²、首都ジョージタウン
ブラジルから泳ぐウミガメと、人がつくった緑の山。アセンション島の旗は、自然と人の手が交わった南大西洋の火山島を、独自の生き物に込めた1枚です。