黄色地に4本の赤い帯、そして紋章。これがアラゴンの旗、スペイン北東部の自治州の旗です。実はこの「4本の赤帯」こそ、カタルーニャ・バレアレス諸島・バレンシアが共有する旗の本家。さらに紋章の中には、サルデーニャの「4人のムーア人」と同じ十字まで隠れています。地中海に広がったアラゴン連合王国の、すべての始まりの1枚。今回はそんなアラゴンの旗の話です。
まずは構成のおさらい
アラゴン旗の構成は、次のとおりです。
- 背景:黄色地に4本の赤い帯(セニェーラ/セニェラ、「アラゴンの4本棒」)
- 左側:アラゴンの紋章(4つの区画)
色とシンボルの意味は、以下のとおりです。
- 黄(金)地に4本の赤帯:アラゴン連合王国の王の紋章
- 紋章:アラゴンの歴史を表す4つの区画
黄色地に4本の赤帯と紋章を組み合わせた、地中海帝国アラゴンの旗です。
「4本の赤帯」 ── 4つの地域が共有する本家
アラゴン旗の、核心を見ていきます。
アラゴンの4本棒
黄色地の4本の赤帯は、セニェーラと呼ばれ、アラゴン連合王国の王を表した紋章です。紋章学では「金地に4本の赤い縦棒」と表されます。その由来については、黄は天の権威(教皇)への帰属を、各棒は王や王家の領地を表すという説もあります(諸説あり)。
4つの自治州が共有
ここが、はたログ的に最高の見どころです。この4本帯のパターンは、今も4つのスペイン自治州、すなわちアラゴン・カタルーニャ・バレアレス諸島・バレンシアの旗に使われています。
カタルーニャやバレアレス諸島の旗で見た4本の赤帯は、すべてこのアラゴンが本家。これまでの記事がつながる瞬間です。
世界最古の現存する旗?
そして、驚きの記録があります。1238年の「バレンシア征服の軍旗」は、現存する世界最古の旗とされています。当時は黄色の部分が白でしたが、赤い帯のデザインは同じでした。
「紋章に隠れた、サルデーニャとの繋がり」
アラゴン旗の、もう1つの秘密を見ていきます。
紋章の4つの区画
アラゴンの紋章には4つの区画があり、そのうちの1つが、赤い聖ジョージ十字に4人のムーア人の頭を組み合わせた「アルコラスの十字」です。
サルデーニャと同じ
これは、見覚えがあるはずです。サルデーニャの旗「4人のムーア人」と、まったく同じ起源(1096年のアルコラスの戦い)を持っています。つまり、アラゴンの紋章の中に、サルデーニャの旗が入っているのです。
4本の赤帯はカタルーニャやバレアレスへ、4人のムーア人はサルデーニャへ。アラゴンは、地中海の旗の「ハブ」だったと言えます。コルシカのムーア人も、このアラゴンの世界の一部です。
「アラゴン連合王国」 ── 地中海帝国とスペイン統一
アラゴン旗の、歴史的背景を見ていきます。
地中海に広がった帝国
アラゴン連合王国は、12世紀にアラゴン王がバルセロナ伯を兼ね、カタルーニャと結びついたことから広がりました。そこからバレンシア・バレアレス諸島・シチリア・サルデーニャ・ナポリへと、地中海に拡大していきます。
スペイン統一へ
そして、世界史を変えた結婚がありました。アラゴン王フェルナンド2世とカスティーリャ女王イサベル1世が結婚し、この2人のカトリック両王が、スペイン統一とコロンブスの航海を導いたのです。
アラゴンの旗の物語は、地中海帝国から、スペイン統一、そして新大陸へとつながっていきます。ヨーロッパ史の大動脈です。
アラゴンという地域
アラゴンの基本情報です。
- 正式名:アラゴン自治州(Aragón)
- 州都:サラゴサ(Zaragoza)
- 面積:約4.7万km²
- 人口:約130万人
- 公用語:スペイン語(アラゴン語・カタルーニャ語も使われます)
- 法的地位:スペインの自治州
「なぜ紋章が付いているのか」
アラゴン旗に紋章が付いているのには、理由があります。1979年、カタルーニャが先に「4本帯だけ」の旗(セニェーラ)を公式に採択しました。そこで1982年、アラゴンは区別のために紋章を加えた旗を採択したのです。
本家であるアラゴンが、後から紋章を足して区別することになった。ちょっと皮肉な経緯です。
「サラゴサのピラール聖母」
アラゴンの文化としては、サラゴサのピラール聖母教会が知られています。また、ピレネー山脈を擁し、画家ゴヤの故郷でもあります。
まとめ:4本の赤帯の本家、アラゴン
今回のアラゴン旗のまとめです。
- 黄色地に4本の赤い帯(セニェーラ、アラゴンの4本棒)と、左にアラゴンの紋章
- 4本帯はアラゴン連合王国の王の紋章(金地に4本の赤い縦棒)
- 黄は教皇への帰属、各棒は王家の領地という説(諸説あり)
- この4本帯は今も4つの自治州の旗に共通:アラゴン・カタルーニャ・バレアレス諸島・バレンシア
- 1238年の「バレンシア征服の軍旗」は現存する世界最古の旗とされる(当時は白地)
- アラゴンの紋章の1区画は、赤い聖ジョージ十字に4人のムーア人(アルコラスの十字)
- これはサルデーニャの旗「4人のムーア人」と同じ起源(1096年アルコラスの戦い)
- アラゴンは4本帯(カタルーニャ・バレアレス)と4人のムーア(サルデーニャ・コルシカ)の「ハブ」
- 12世紀にバルセロナ伯と結びつき、バレンシア・バレアレス・シチリア・サルデーニャ・ナポリへ拡大
- アラゴン王フェルナンド2世とカスティーリャ女王イサベル1世の結婚がスペイン統一とコロンブスの航海を導いた
- カタルーニャが1979年に4本帯だけの旗を先に採択、アラゴンは1982年に区別のため紋章を加えた
- 州都サラゴサ(ピラール聖母教会)、ゴヤの故郷、面積約4.7万km²、人口約130万人
4本の赤帯の、本家。アラゴンの旗は、地中海に広がった帝国の記憶であり、はたログのいくつもの地中海の旗がここから生まれた「すべての始まり」の1枚です。