赤と白の横2分割。アルザスの旗、ロット・ウン・ヴィス(Rot un Wiss=アルザス語で「赤と白」)です。フランス北東部、ライン川を挟んでドイツと接する地域の旗で、フランスとドイツの間で何度も帰属が変わってきた土地でもあります。隣のロレーヌと並ぶ「アルザス=ロレーヌ」の片割れで、ドイツ語系の文化を持ちながら、今はフランスに属する1枚。今回はそんなアルザスの旗の話です。


まずは構成のおさらい

アルザス旗の構成は、次のとおりです。

  • デザイン:赤(上)と白(下)の横2分割(ロット・ウン・ヴィス)

色とシンボルの意味は、以下のとおりです。

  • :力・強さ・不屈、そして勇気や情熱
  • :純粋・平和、文化の豊かさと共生への願い
  • 由来:アルザスの紋章にある、赤地に白い斜め帯

赤と白のシンプルな2色ながら、歴史の重みを背負った1枚です。


「紋章から生まれた赤と白」

アルザス旗の赤と白が、どこから来たのかを見ていきます。

下アルザスの白い帯

赤と白は、アルザスの伝統的な紋章に由来します。そのうち下アルザスの部分が赤地に白い斜め帯で、これがそのまま旗の赤と白になりました。さらに古くは、11世紀のロレーヌ公ゲラルドが掲げた赤白の旗にも遡るといわれます。

上下アルザスの紋章

アルザスの紋章は、上下2つに分かれています。左の下アルザスは、赤地に白い斜め帯で、これはヴェルト伯家の紋章に由来します。右の上アルザスは、赤地に金の斜め帯と6つの金の王冠で、こちらはハプスブルク家(オーストリア)支配下の上アルザスを表します。この赤地の白い帯が、そのままアルザスの旗の赤と白になりました。


「ドイツとフランスの間で」 ── アルザス=ロレーヌ

アルザスの旗が背負う、最も重い歴史を見ていきます。

何度も帰属が変わった

アルザスは、ドイツとフランスの国境に位置する土地です。1871年、普仏戦争の後にドイツへ併合され(アルザス=ロレーヌ)、1918年の第一次大戦後にフランスへ戻りました。さらに1940〜44年には、ナチス・ドイツに再び併合されています。

赤と白はアイデンティティの旗

ドイツ統治下のアルザス=ロレーヌで、住民は赤白の旗を掲げるようになりました。ドイツでもフランスでもない、アルザスそのもののアイデンティティを示す旗としてです。ロレーヌ(ロレーヌ十字)と並んで、アルザスの赤白も国境の地の誇りの旗になりました。アルザスはドイツ語系のアルザス語を話す、独・仏ハイブリッドの文化を持っています。

1949年の「もう1つの旗」

旗には、少し複雑な事情もあります。赤白のロット・ウン・ヴィスはドイツ的なルーツを持つため、1949年には、上下2県の連合を表す別の旗(紋章入り)が作られました。それでも住民に愛されてきたのは、やはり赤白のロット・ウン・ヴィスのほうでした。


アルザスという地域

アルザスの基本情報です。

  • 正式名:アルザス(Alsace/アルザス語:Elsass)。現在はグラン・テスト地域圏の一部
  • 主要都市:ストラスブール(Strasbourg)
  • 公用語:フランス語(アルザス語も)
  • 法的地位:フランス(旧地域圏)

「ストラスブールとヨーロッパ」

ストラスブールは、欧州議会・欧州評議会の所在地です。かつて独仏が奪い合った地が、今では独仏和解とヨーロッパ統合の象徴の街になりました。

「クリスマスマーケットとワイン」

アルザスは、クリスマスマーケットやコウノトリ、木組みの家が並ぶコルマールでも知られます。リースリングなどの白ワインや、シュークルート(ザワークラウト)も名物です。


まとめ:赤と白「ロット・ウン・ヴィス」、アルザス

今回のアルザス旗のまとめです。

  • 赤(上)と白(下)の横2分割(ロット・ウン・ヴィス=アルザス語で「赤と白」)
  • 赤=力・強さ・不屈・勇気・情熱、白=純粋・平和・文化の豊かさと共生
  • 赤と白は、アルザスの紋章(下アルザスの赤地に白い斜め帯)に由来し、11世紀のロレーヌ公ゲラルドの旗にも遡る
  • 紋章は上下に分かれ、下アルザス=赤地に白い斜め帯(ヴェルト伯家由来)、上アルザス=金の帯と6つの王冠(ハプスブルク/オーストリア由来)
  • 1871年の普仏戦争後にドイツ併合(アルザス=ロレーヌ)、1918年にフランスへ、1940〜44年に再びナチス併合
  • ドイツ統治下で住民が赤白の旗を掲げ、アルザスのアイデンティティの旗に
  • ロレーヌ(ロレーヌ十字)と並ぶ「アルザス=ロレーヌ」、独・仏ハイブリッドのアルザス語文化
  • 1949年に別の紋章入りの旗も作られたが、愛されてきたのは赤白のロット・ウン・ヴィス
  • ストラスブールは欧州議会・欧州評議会の所在地、独仏和解とヨーロッパ統合の象徴
  • クリスマスマーケット、コウノトリ、コルマール、白ワイン、シュークルート
  • 現在はグラン・テスト地域圏の一部、主要都市ストラスブール

赤と白、ドイツとフランスの間で。アルザスの旗は、国境の地で何度も帰属が変わってもなお守られた、アルザスそのもののアイデンティティを込めた1枚です。